1-2
◇◆◇
レーベリッヒ国の王都ライベルは、周囲を山に囲まれた城塞都市だ。
壁より内側に入ると市街地が広がっていて、そこを抜けた中央、
「一年ぶりに来てもらったというのに、今日は大変だったね、レイラ」
客間でレイラとテーブルを
リッツ・レーベリッヒ。レーベリッヒ国の第一王子であり、レイラを王都に呼んだ張本人である。
レイラがリッツと顔見知りなのは、クリフォード家が代々ブリーダーを
「まさか
「先ほど、特に怪我はないと報告があった。安心してほしい」
「よかった……」
ほっ、とレイラは胸を撫で下ろす。
騎士とドラゴンに助けられてすぐ、レイラ達のところには城から
安心すると、
「魔物に襲われても、馬達はすぐに落ち着きを
「ありがとう。けれど一人
「光栄です」
「
長い足を組み、
「そこまで
正直な話をすると、馬の世話や、バルドに会うのは
それなのにレイラが
「そうか、残念だ」
「すみません」
「ではせっかくの年に一度の機会だ。今日くらいはゆっくり話をさせてくれ」
リッツの愛馬を担当する前から、レイラは養父母と共に何度かレーベリッヒ城に登城していた。そのためレイラとリッツは、会う回数こそ少ないとはいえ、五年以上の付き合いがある。さらにリッツは、レイラの
次期国王として様々な者と接することを
「それにしても、レイラの乗る馬車が魔物に襲われたと知ったときは、私も気が気ではなかったよ。護衛の騎士から
「団長……?」
「君を助けに行ってくれた、竜騎士団の団長だ。クラウス・ウォルフ。会っただろう?」
リッツに言われて、黒髪の青年の姿がレイラの
「
「はい。まさか竜騎士団が設立されていたなんて」
竜騎士団は、最近頻繁に出没する魔物に
「ドラゴンは人間に恐れられているはずなのに」
「安心してくれ。彼らは絶対に人を襲わない。何故なら――」
「王都でそれほどまでにドラゴンと人の間に信頼関係が生まれていたなんて、私、
無意識にレイラの頰が緩む。
「やっぱりドラゴンと人間は分かり合えるはずなんです。一体いつからですか? どんな方法で? 竜騎士団ということは、あの火竜以外にもいるということですよね!? 私火竜以外とはまだ会ったことがなくて。個人的には水竜が泳いでいるところが見たいのですが、ここには何頭ほど――」
つい興奮してしまい、
「す、すみません……」
「いや……」
目を丸くしていたリッツは、すぐにくすくすと笑い出す。
「いつも冷静な君のそんな楽しそうな顔、初めて見たよ。ドラゴンに興味が?」
「はい」
「そうだったのか」
魔物は人間を襲う。ドラゴンだって例外ではない。むしろあの大きな体軀で宙から襲ってくるドラゴンは、どんな魔物より
「そんなに興味があるならすぐに
「仕事として来ている以上、個人的な感情は不要ですし……」
「本当に君は、そういうところが真面目だね。私と君の仲だろう?」
「ありがとうございます。……実はずっと、気になっていました」
「ちなみに、ドラゴンについての知識は?」
「それなりに調べたりはしていましたが、専門家の方には
「ということは、少なくとも私よりは
リッツは
「レイラ、もしよければ私達に助言をくれないだろうか?」
それはまさに、竜騎士団を設立したこの国の後継者としての顔だった。
そのためレイラも、ブリーダーとしての表情で強く
「私でよければ」
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