第22話 光輝の訓練 3

光輝の訓練を慎二が面倒見ていることで、表向き聖女からは何も言われなかった。ただ、クレシスからはかなり睨まれているのがハッキリと分かった。

 それでも、光輝が魔法を使えるようになったことは、国王に報告させられた。ダンジョンに潜りに行っているから、それなりに見られていることは分かっていた。

 光輝は優しすぎるせいか、未だに魔物を倒してなどいなかった。

「討伐?」

 国王の前で、慎二は不躾にも聞き返した。もう面倒なので、アレクのフリをやめていた。だから、国王から魔物を討伐してくるよう命じられて、思わず怪訝な顔をした。

「ダンジョンでもないのに、魔物が発生するようになった森がある。このままでは街道が使えなくなるので、勇者殿にお願いしたいのですよ」

 宰相が最もらしく言ってくれば、断ることも出来ない。未だに具体的な逃げ道を見いだせていなければ、従うしかないのだ。

「分かりました」

 慎二が返事をすると、直ぐに宰相か、口を開いた。

「では、今すぐにジークフリートと共に行っきてくれ」

「え?なんの支度もしていない」

 慎二が抗議を口にすると、

「勇者アレク殿は鎧を身にまとい、剣もお持ちではないですか。移動用の馬は既に城の外によういしてございますよ」

 宰相はそう言って、慎二を連れ出そうとする。

 下手に抵抗できない慎二は、強引に馬に乗せられてしまった。馬の乗り方なんて習ってなどいない。

「いい馬ですから、乗り心地はよろしいかと思いますよ」

 そう言われたところで、慎二は手綱の操り方さえ知らない。手綱を握りしめて困惑していると、馬に乗ったジークフリートがやってきた。

「行くぞ」

 短く言われて、ジークフリートの方を見れば、馬が勝手に歩き出した。慎二の馬は、分かっているのかジークフリートの馬の動きに合わせて進む。

「アレク、さっさと片付けちまおうぜ」

「え、あ、ああ」

 ジークフリートは慎二にそう言うと、馬を走らせた。慎二の馬もジークフリートの馬に合わせて走り出す。

「聖女の罠か?」

 慎二が聞く。

「おそらく、お前たちを引き離すのが目的だろう」

 ジークフリートは苦い顔をした。

「なぜ?光輝は俺が訓練しているじゃないか」

「もしかすると、聖女は魔力が目的かもしれない」

「魔力?」

「言ったろ、お前たちの模様は吸収だって」

「じゃあ、なにか?聖女は光輝の魔力を吸収するつもりなのか?」

「わからん。けれど聖女が大量の魔力を欲しがっているのは事実だ」

「あの姿を保つために?」

「ああ、それは間違いないな」

 この国の貴族たちは知っているのだ。聖女は一度たりとも世代交代をしていない。聖女は再生を繰り返している。

「それに、お前が魔物を倒せば、そいつらの魔力が聖女の所に放出されるからな」

「気味が悪いな。魔力が欲しいなんて、まるで……」

 慎二はそこまで言っておきながら、それ以上声に出せなかった。

「言うなよ、それだけは」

 ジークフリートが真面目な顔をする。

 面倒なことだけど、勇者としての仕事をこなすことにした。

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