伽藍とドラグ
「ひゃはぁ~~~~~、肉が旨めええええええぇ。」
伽藍がビール(生中)を片手に器用に箸を使って黒毛カルビに舌鼓を打っている。
「はぁあああああ、肉を焼くだけかと思ったがたれが付いていて焼いた後もたれを付けるのか。贅沢な食べ方だな。」
伽藍の隣でドラグもお肉に舌鼓を打っていた。
勇者パーティーの双剣使いのドラグ。
逆毛だった赤毛と無精ひげのおじさんである。
もともと目立った格好をしてなかったが、こちらの世界ではくたびれたワイシャツにジーパンという格好に変装している。
伽藍と並ぶと、やんちゃな若造とそれに振り回されるくたびれた中年オヤジのようなサラリーマンの先輩後輩のようにも見える。
「おっ、ドラグさんよ~。お箸の使い方は下手ですな~。双剣はあんなに器用に使っていらしたのに~。」
「うるさいなぁ。剣と箸だと使い勝手が全然違うんだよ。」
と、うざめの絡み方をしている。
先日、勇者の襲撃時には互いに剣を交え合った2人だが、この場では仲良くやってくれているようである。
「そういう伽藍は箸をうまく使うよなぁ。」
ドラグがそう言うと伽藍は嬉しそうにニヤニヤ笑いながら箸を
開いたり閉じたりしながらのたまう。
「そりゃぁお前さん、俺様は器用だからな。」
「その割には剣は馬鹿正直だったけどな。」
「うっ、うるせぇ。ありゃあれだ。お前に合わせて手加減してやってただけだ。」
「へいへい。オジサンはザコいからね。手加減してもらって大変ありがたいですよ。」
「あ?なんだよお前。その「仕方ないから下手に出ておこう。」みたいな言い回しは。」
「いやいや、変な誤解しないでよ。これオジサンの本心だから。」
「だとしても。俺様と切り結んで無傷だったんだからよぉ。その自分を卑下した言い方やめてくれねぇ。俺様まで弱っちく見えちゃうだろうが。」
「だからぁ、ソレは伽藍さんの手加減のおかげであってですね。」
「よおし、ならば手加減なしで相手しようか。」
「ちょっと、ちょっと、ここでは刃傷沙汰は無しだと言われてるでしょう。」
「んなぁこたぁ分かっている。だからコレよ。」
伽藍はそう言って飲み干したジョッキを机に振り下ろす。
割らないでよ。
「飲み比べだよ。ゲップ。どっちが多く飲めるか勝負だ。」
「伽藍さん。すでに結構飲んでますよね。」
「ハンデだ、ハンデ。」
「……結局手を抜くんじゃないですか。」
あっちはあっちで仲良くしてくれいるみたいだ。
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