花見の主菜
さて、精鋭を集める花見と言うからどんな大人数が来るかと思ていたら、主賓たちだけでも20人に満たない。
護衛の人を含めて、100人に満たなかった。
興味が無かったので調べてなかったが、この世界の軍団とは100人規模らしい。
多くは一騎当千のつわものたちの一騎討が主体で全軍でのぶつかり合いでも双方合わせて500人くらいが主体らしい。
その中で飛びぬけて数が多いのが人間族でその数を活かして、他種族に圧制を敷いてきた歴史があるそうだ。
さて、
今回の花見には各種族の代表が集まっている。
魔王様をはじめとする魔族。
花見の席を提供してくれたエルフィン族。
エルフィンとは仲が悪いが、敵の敵は仲間意識でつながってるドワルフ族。
オーク、ウェアタイガー、ウェアウルフをはじめとした多種多様な姿をする獣人族。
オーガ族。俺の知るファンタジー知識で出てくるゴブリンはオーガ族の小さい氏族らしい。
意志持つ植物たちのドライアド族。
そして、小さき体に大きな魔力を持つピクシー族。
合わせて7種族。
人と同じように知性がありながら、人に人とは扱われなかった者たち。
彼等は長らく人間に奴隷として扱われてきた。
この世界には他にも知性の高い種族はいる。
その中でこの7種族は同じ苦しみを分かち合った者たち、魔王様に賛同する同士なのだ。
ゆえに魔王様からの、今後の結束を高めるための此度の花見の御催しにも快く参加してくれた。
「だというのに、何で人間がこの場を取り仕切るのだ。」
怒りも露わに赤い顔をした巨漢が皆を代表して文句をぶつけて来た。
俺の前に魔王様がいなかったらすでに取って食われていただろう。
だってオレ人間だもの。
皆さんが恨み骨髄な人間がいたらそりゃ頭にも来ますよね。
「まぁ落ち着くがよい。
「魔王様、それはどういうことですかいな。コイツはワシら異人同盟の同志たちを食い物にしてきた人間じゃないのか。」
「言うたであろう。コイツは人であって人っではない。いうなれば「異世界人」である。」
「はぁあ?」
伽藍と呼ばれた巨漢の男は魔王様の説明に眉を寄せて首を傾げた。
「少し宜しいですか魔王様。」
伽藍の横から妙齢の女性が進み出て来た。
確か彼女はこの場を提供してくれたエルフィンの女王、「テュール」様だったかな。
「お話を聞くに、魔王様は伝説の異世界召喚を行ったのですか。」
「そうだ。」
ざわざわざわざわざわ。
魔王様の答えに皆がざわめく。
「か~~~~~~、あの名高き異世界召喚でやって来たのが人間だったとか、そりゃ残念過ぎますやろが。」
伽藍があからさまにがっかりして、皆もそれに賛同する。
俺自身だって同意見だ。
「伽藍よ。我も最初はがっかりした。だが、こ奴は我らに無い物を持ち込んできた。」
「ほ~う。」
頭を掻いていた伽藍の目が興味を持たようにこちらを見る。
「異世界召喚の義は容易くは出来ない。しかし、この者は自由に故郷と行き来できる力を得ている。ゆえに我はこ奴を重宝することにした。」
「なるほど、つまり此度の集まりはそのあるもののお披露目ってことですかい。それは何ですかい。」
魔王様は一拍おいて皆をじらしてから傲然と言い放った。
「それは”酒”だ。」
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