6.〈fin.〉
春休みが開け、始業式ーー。
休み時間になり、教室中、ざわざわと騒がしくなる。
そんな中、自分の席に座っていたわたしは、ブロンシュさんの言葉を思い出す。大丈夫、大丈夫、と。
小さく息を吸って、はき出して。決意を固めると、わたしはイスから立ち上がる。そして、窓際の後ろの方の席で、一冊の本を二人で一緒に読んでいる子たちの方に向かって歩き出した。
その前で立ち止まると、もう一度、大丈夫と自分に言い聞かせる。
「ね、ねえ。何の本、読んでるの?」
わたしがたずねると二人は本から視線を上げ、わたしの方を向いてくれた。
だけど、突然私が話かけたからだろう。きょとんと目を丸くしている二人に、わたしはぎゅっとこぶしを握りしめた。
「あ、あのね、わたし、本が好きなの。だから……!」
大丈夫、大丈夫。
がんばって続きを言うと、二人は顔を見合わせて。それから、そろって、にこっと笑ってくれた。
「これ、『ぞくぞく町の魔女のオバリン』っていって、ぞくぞく町シリーズの中の一冊なんだけど、おもしろいんだ」
「あっ、知ってる! わたしも好きなんだ、ぞくぞく町」
「えっ、本当?」
「うん。その本を書いてる作家さんの、他の本も好きなの」
「そうなんだ。アタシはまだぞくぞく町しか読んだことないけど、他の本もおもしろいの?」
「うん、ぞくぞく町と同じくらいおもしろいよ!」
本当だ。好きって、魔法みたいだ。
本を読んでいた子たちーー、
わたしはドキドキと高鳴っている心臓をうまく抑えられない中、それでも、
「ありがとう」
と、心の中でブロンシュさんにお礼を言った。
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