勇者-2
それからリーフたちは、
「第一条件は、とにかく冒険者としての格を上げることだな。アルテはともかく俺は
オトの言葉にうなずいて、リーフは鼻息を荒くした。ランクを上げるにはひたすらクエストを達成して功績を積み上げるほかない。簡単に聞こえるが、銀級すら冒険者のわずか上位10%という高いハードルである。
リーフたちは初日から、薬草や鉱石などを集めて納品する「採集クエスト」や、依頼主を護衛する「護衛クエスト」、野盗や山賊を制圧する「制圧クエスト」など、
ランクを上げるには「討伐クエスト」が手っ取り早いが、それをしたくないという個人的な思い以上に、リーフには「一度も魔族を殺さないまま金級になった」という実績が必要だった。
人間に、魔族に、あらゆる種族に「共生する世界」を訴えるために。
ゴッソとの決闘でリーフの実力と所持魔法が露見したこともあり、ギルドの査定は高速で上書きされていった。リーフは2日で
ある日、国が手を焼いていた腕の立つ野盗団、《レイブンズ》の根城に乗り込み、フルボッコにして全員まとめて衛兵に突き出したのだが、それがけっこう大手柄だったらしい。
リーフが冒険者となって2週間あまりが経過したその日、リーフとオトは、二人同時に
リーフとオトは、お揃いの銀の首飾りを光らせ、互いの肘と肘をぶつけ合って笑った。
ダストタウンでの暮らしも劇的に変わった。というのも、リーフの「この町を僕たちの拠点にしましょう!」という突拍子もない提案から、ダストタウンの"大掃除"が始まったからである。
ダストタウンには、毎日のように地上の商人や市民から大量の廃棄物が投げ捨てられる。孤児院周辺はユイや子どもたちで毎日キレイにしているが、少し外周部へ近づくと異臭が鼻を突いて、間もなく目を覆いたくなるようなゴミの山が広がる。
リーフはクエストを詰め込んで多忙なスケジュールの合間を縫って、ダストタウンのゴミを少しずつ、地道に【破壊】していった。それでも毎日捨てられるゴミの量のほうが多いと分かるや、朝四時半に起きて早朝から掃除に繰り出した。
こっそりバレないように行っていたのだが、あっさり二人にバレて、アルテとオトも手伝ってくれるようになった日から一気に作業が楽になった。二人に怪力や魔法でゴミを一か所に集めてもらい、それをまとめて【破壊魔法】でチリにする。
妙なことをやっている三人組がいる、と、ダストタウンで暮らす人々の間で噂になっていた。まもなく孤児院の子どもたちや、ユイ、ギギまで手伝いにきて、そこからは奉仕活動というよりは、楽しい遊びの時間みたいになってしまった。
なにしろユイが、子どもを操る天才だった。「誰がたくさんゴミを集められるかなー?」「この大きさは1ポイント、これは3ポイント、これくらい大きいのは5ポイント!」などと焚きつけてゴミ拾いをゲームにしてしまい、子どもたち(とついでにギギ)が熱狂してゴミ山を駆け回るようになったのだ。
「本当にありがとう、リーフ君」
手や顔を真っ黒に汚して働くリーフの隣にユイがやってきて、花が咲くような笑顔でそう言った。
「そんな、お礼を言うのは僕の方ですよ。僕が勝手に始めたことなのに」
「ううん。リーフ君が来てから、なんか、『ずっと変わらないんだろうなぁ』って思ってたすっごく大きくて重い"壁"みたいなものが、一気にぶっ壊された感じ。見て、この町、どんどんキレイになってる。町の人たちも、ほら、今日も何人か見に来てる。ちょっとずつ、町も、みんなも、明るくなってる気がする。リーフ君のおかげで、
鼻歌でも歌い出しそうな顔で、ユイはリーフの肩に軽くぶつかってきた。
「おお〜い、リーフ! ここに集めたゴミぶっ壊してくれ〜!」
「リーフお兄ちゃーん! 早く早くー!」
アルテと子どもたちの呼ぶ声が聞こえてきた。すっかり、子どもたちもリーフに懐いてしまった。魔界にいた頃は、こんな生活があるなんて考えもしなかった。
「はーい、いまいくよー!」
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