治癒師リーフ-2
それから女二人の、何やらリーフには分からない静かな
光とともに消える直前、アルテはちょっと心配そうにリーフの方を見ていた。どうやらティアは、アルテでも逆らえないほどの女であるらしい。
「じゃあ、ボクたちも行こうか」
リーフの手をとって、ティアは魅惑的に微笑むと、そっと【転移魔法】を唱えた。
転移の光が薄れると、リーフは目の前に広がった光景に絶句した。
夕焼け空を反射して光る、見渡す限りの
その広大な庭に囲まれて、一本の巨木が、茜色に焼けた天を貫くようにして伸びていた。その
見上げれば、
――世界樹。
見たこともないのに、そうだと確信した。
「部屋の中に直接飛んでも良かったが、それでは
ティアは手を握ったまま、リーフを上目で見上げた。並ぶと、わずかにリーフより彼女のほうが背が低い。それでもこの場で主導権を握っているのは、圧倒的に彼女だった。
「ここは……」
「《世界樹の図書館》。エルフの隠れ里だよ。エルフ以外の種族が足を踏み入れるのは、極めて
ティアに手を引かれ、リーフは
夢見心地で上昇し、気がつくと、リーフは世界樹の最上段――標高数百メートルに浮かぶ、ティアの部屋の中にいた。
世界樹の
夕空は
シーツは柔らかく、小川の流れのようにひんやり、スベスベしていた。生地からして人間や魔族のそれとはモノが違う。
「リーフ」
いつの間にか隣りに座っていたティアが、耳元で甘くささやいた。
「今日の決闘、一目見たときから、君に目が離せなかったよ」
「わっ――」
甘い香りが舞ったかと思うと、リーフはベッドに背中を打ちつけていた。柔らかすぎてまったく痛くない。上にのしかかったティアの白い髪が、リーフの顔をくすぐった。
あどけなさと妖艶さが絡みあうティアの美貌が、ロウソクの
「えっ、と……」
困惑するリーフをよそに、ティアは
風も吹いていないのに、ふっ、とロウソクが消えた。
「魔人が、人間の国になんの用かな」
心臓がバクンと跳ね上がった。リーフの肌に指を這わせ、ティアは妖しく笑う。
「《賢者》ほどではないが、ボクも【光魔法】には
「いや、これは」
反射でオトの名前を出しかけて、リーフは慌てて口をつぐんだ。魔人の存在を
「あはははっ、君は本当に友達思いなんだなぁ。友達を売ることもできなければ、友達の優れた魔法を自分のものと偽ることもできない。結果的に、全てを白状したのと変わらないね」
「……どうして、僕をここに連れてきたんですか」
「確かめるためだよ、魔人君」
ティアは更に、全身を押しつけるようにリーフに密着した。はだけたローブの
なんだか気が遠くなる。何か、体の活力を
「うっ……」
「動けないだろう? こうしている間、ボクは君から魔力を吸い上げることができる。あぁ……君の魔力は
白い肌をわずかに
「君の秘密は誰にも話していない。君が魔人だと、知っているのはボクだけ。さぁ、こんなに密着しているんだ。さっきの【破壊魔法】で、今ならボクを簡単に消し飛ばせるだろう? それとも、このまま吸い尽くされたいの?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます