けじめ-1
「お前はぶっちゃけ、人間ウケのいい顔をしてるぜ。肌の色さえ誤魔化せば女にもモテるだろうよ」
「そんな簡単に誤魔化せるもんでしょうか……それに、ギギは?」
「ギギも一緒に来ればいいだろ。《テイム》っつって、魔物を
『ギギ!? ギーギー!』
ギギは大はしゃぎを始めたが、リーフは煮え切らない顔のままだ。
「
アルテがあまりに軽い口調で言うので、どこまで本気で言っているのかわからなかった。しどろもどろになったリーフに、アルテは「まどろっこしい」とばかりに顔を近づけた。
「分かんねえやつだな。私が、お前とまだ一緒にいたいんだよ」
少しだけ照れくさそうに、ぶっきらぼうに言われて、リーフは硬直した。自分と一緒にいたい、そんなふうに思ってくれる人が、この世にいるなんて、有り得ないと思っていたから。
「さっきの、錆竜倒したときのこと、覚えてないんだろ?」
「倒、した……僕が……?」
「やっぱり覚えてないのか。お前が、私を助けてくれたんだよ。……あんときのお前を見て、なんか、ほっとけなくなった。二度も命を救われたんだ、それなりの礼も尽くさなきゃいけないし。だから、お前さえよければ、もう少しだけ私に付き合えよ」
リーフは、差し出された手をすぐにでも握りたかった。しかしリーフは、その手を取らなかった。
「……すみません。やり残したことがあるんです」
「そうか。なら手伝うぜ」
「いえ、僕一人でやらなくちゃ意味ないんです」
このままアルテについていってしまったら、リーフは二度と、魔界に戻ってこない気がした。この良い人たちから離れられないに違いない。そうなったら――僕は、あそこから逃げたようなものじゃないか。
まだ、一度も話を聞いてもらっていない。僕という存在を受け入れてもらっていない。【回復魔法】しか使えない落ちこぼれでも、一生懸命みんなのために頑張るから、だから、アルテのように受け入れてほしい。
助けを呼んでくると言ったきり、帰ってこなかったゴッソたちも心配だ。もしかしたら、途中で冒険者に襲われてしまったのかもしれない。怪我をしているなら、治してあげないと。そして無事な姿を見せて安心させてあげなければ。
「ギギ、君はアルテさんと一緒にいくといい。一番安全だし、君が主人と認めたのはアルテさんだろ」
『ギギィ……』
ギギは目をうるうるさせてリーフを見つめた。アルテは小さくうなずいて言った。
「分かったよ。じゃあ目的地まで送ろう」
『ギギィ!』
「いいんですか?」
「行ったことのない地域を歩いておくのは、私としてもメリットあるんだよ」
いたずらっぽく笑ったアルテの言葉の意味はよく分からなかったが、歩いて数時間かかる道のりを彼女たちと歩けるのは嬉しかった。
ついてくる気満々らしいギギとともに、三人はリーフの住む魔界の街へと歩き出した。
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