死んじゃうカナタ

@laylale

第1話

雪は夏向が立てた珈琲にミルクを注いで、シロップを持ちながらいつ自分の家に帰るか考えていた。


雪の家が夏向の家からすごく遠いかと言ったらそんなことは特になくて、最寄り駅の話で言えば35分くらいで着く距離に祖母と母親と暮らしているのだ。


夏向は中学校の後輩で卒業式に夏向が花束をくれてからかれこれ8年経つが、雪はその8年の夏向の動向をほとんど知らない。




雪は中学を卒業して私立の女子校に入学して、大学には行かずに昼はOLをやりながら夜はホステスをしていた。

一方の夏向はというと、雪が高校3年の頃突如としてニューヨークに高飛びして、1年くらい前に日本に帰ってきていた。


夏向のニューヨークに行ってからのことやここ1年の具体的な生活サイクルを、雪は本当に知らない。



別に聞いて困ることではないが夏向は自分のことをよく話したがらない。困ったように眉を下げながら誤魔化したようにアバウトに「このような感じ!」と話す。

夏向の人生観や感情には少し興味があるが、話したがらないことを聞いて夏向に不快な思いをさせるくらいなら、雪は静かにその興味を抑えた方がいいし、それを弁えられない大人になりたくない感情の方がずっと上だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

死んじゃうカナタ @laylale

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る