幼馴染が21回目の誕生日を迎えたので告白します

下垣

(´・ω・`)……(´;ω;`)

 今日は幼馴染の21回目の誕生日だ。俺は彼女のことが小さい頃から好きだった。彼女への想いは年々募っていくばかりで、次の誕生日には告白しようと思っていても中々に踏ん切りがつかなかった。


 だが、今回の21回目の誕生日。俺は勇気を出して告白することにした。俺の収入ではそこそこ高めのレストランに予約をして幼馴染を呼び出した。ドレスコード必須の店だったので、服装にかかるお金もバカにはならなかった。今の世情の感覚的には古いのかもしれない。けれど、俺は、男として見栄を張りたかったのだ。


 店員がやってきて俺たちのグラスにワインを注ぐ。


「誕生日おめでとう」


「ありがとう」


 俺たちは乾杯をして、ワインの飲む。そう言えば、ワインを飲んだのは久々だな。俺がハタチの誕生日の時に飲んだ以来だ。なんだかとても懐かしい気持ちになった。あの頃はまだ生きていた親父が、俺のために買ってきてくれたワインだった。当然、初めて飲む酒がワインということで悪酔いしてしまったけれど、今となってはいい思い出だ。


「あのさ……プレゼントがあるんだけど」


 俺は、小さな箱を取り出した。そして幼馴染にそれを渡す。


「中を見てもいい?」


「ああ」


 幼馴染が箱を開けると目を見開き、驚いたような表情を見せた。それもそのはず、俺がプレゼントしたのは高価なダイヤの指輪だった。


「こ、こんな高価なものどうしたの!? 私たちの年代の収入で買えるものじゃない」


 確かに俺たちの世代の収入は安い。ダイヤの指輪を買うのは難しいだろう。


「ん-。まあ、そうだな。貯金を切り崩して買った」


「そ、そんな……私のために」


「惚れた女にくらいかっこつけさせろよ」


「え?」


 幼馴染は手で口元を抑えて涙目になる。


「俺はお前のことが好きだ。ずっと、ずっと前から本当に好きだった。だけど、俺はずっとこの気持ちを言えないでいた。俺には勇気がなかった。けれど、俺は……これからの人生のことを考えたら、言わないで後悔したくなかった。これから先、本当に好きな人に想いを伝えられないまま死ぬことを想像したら、凄い悲しい気持ちになった。だから、その今更なんだと思うけど、俺と結婚を前提に付き合って欲しい」


 俺の言葉に幼馴染はボロボロと泣き始めた。


「バカ……遅いよ。どれだけ待ったと思ってるの。私、もう他の人と結婚しちゃったじゃないの」


「でも、旦那さんとはもう死別したんだろ。結婚するのに障害はない」


 幼馴染が結婚したと聞いた時はショックだった。俺がぐずぐずしていたせいで、他の男に取られた時は本当に悔しくて泣けていた。素直に祝福できない自分にも嫌気がさしていたし、結婚報告された日のことは今でも鮮明に覚えている。


「私はもう子供がいるの。ううん。子供どころか孫も曾孫もいる。肌だってこんなしわくちゃで、腰だって曲がっている。こんな年老いたお婆ちゃんのことがまだ好きなの?」


「ああ。年老いているのは俺も同じだ。それに、体は歳を取っていても、俺の想いは老化してはくれないんだ。この気持ちだけはいつまでも若いままだ」


 幼馴染は指輪を手に取り、そして自らの左手の薬指に嵌めた。これは返事はOKだと言うことだろうか。


「そうね。私ももう死ぬだけかと思っていたけれど、人生の最後に本当に好きだった人と一緒になるのもいいかもしれないね」


「ありがとう。俺の余生をかけて必ず幸せにする。そして、一緒のお墓に入ろう」


 こうして、俺はめでたく幼馴染と付き合い結婚することとなった。今日のことは忘れない。2月29日。幼馴染の誕生日にして、俺たちが婚約した日。

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