第3話:初めての依頼
田中君が転校してから私の学校生活は、平和になった。
食事中もみんなが田中君と一緒にいてくれるから、ゆっくりと食事をすることができる。
恐らくこれも、田中君が意図的にしてくれていることなんだろう。
私のことをジェシカ様と呼んだり、厨二病な一面は少し気になるけれど、本当に感謝している。
私は食事を食べ終わり、部室に向かうことにした。
部室でしばらく待っていると、田中君がパソコンを持ってやってきた。
「昼休みの時間を使って、ホームページを立ち上げてしまいましょう」
「ホームページってそんな簡単に作ることができるの?」
「今の時代は、サーバーとドメインを繋げば簡単にできますよ。
ワードプレスがあれば、簡単にカスタムすることもできますからね」
私には、何を言っているのか良くわからない。田中君は、黙々とパソコンで作業をしている。
「できました。これで日々の活動を記事にすれば、部活をしていることの証拠になります。また、後日ゴミ拾いをしている写真を投稿すれば文句は言われないでしょう」
私はパソコンを覗いてみると、しっかりとホームページが作られていた。
「ホームページやサイトって、こんな簡単に作ることができるんだね」
「今の時代は、簡単に作ることができますよ。では、放課後から本格的に活動をしていきましょう」
私達は、ホームページを一通り作り、部室を後にした。
放課後のチャイムがなると、私は再び部室へと足を運んだ。
これが初めての部活動だ。
部室に入ると、田中君がパソコンを操作している。
「ルーズベルト何をしているの?」
「ファビコンやヘッダーを作っています。
それに今の状態では、検索エンジンで上位に表示されることはありませんからね。少し考えないといけません」
私は何のことだか分からない。けど、とにかく今は考え事をしているみたいだ。
「職員室に行きましょう。
学校のホームページにボランティア部のリンクを貼り付ければ多少ドメインパワーが上がるかも知れません。
ボランティアをしているという定で動けば、そのほか被リンクも貰えるでしょう」
「あのごめん。さっきから私にはさっぱり分からないんだけど……」
「簡単に言えば、より多くの人にホームページを見てもらう工夫をしないといけないんです。私達の場合は、ホームページのの更新を頻繁にすることはできませんからね」
とにかく今のままでは、多くの人に見られないらしい。
私達が職員室に向かおうとしたとき、篠宮先生が部室にやってきた。
「1日で随分綺麗になったじゃないか。
ボランティア部の記念すべき初日ということで、来たんだが順調かい?」
篠宮先生が質問をすると、田中君がパソコンの画面を向け質問に答えた。
「とりあえずホームページを作ってみました。ここにボランティア部の活動を記事にして更新していくつもりです」
「二人でよく作ったな。費用は部費にしてやるから、後で私に領収書だけ渡してくれ。先生が手伝えそうなことは、今のところないのか?」
「学校のホームページでボランティア部のホームページを紹介してほしいです。
それと、市役所のようなでかいサイトでホームページを紹介してくれるところを探してくれると助かります」
「学校のホームページで紹介することは可能だ。
しかし、実績もないのにいきなり紹介してくれは、難しいだろ。まずは、実績を積むためにも、学校内でボランティア部の存在を知らせることが大切だぞ」
篠宮先生は、放送室の鍵を田中君に手渡し教室を後にした。
私達は、放送室に入り、ボランティア部の紹介をすることにした。
紹介内容は、ボランティア部はなんでも相談に乗り解決をするという内容だ。
「ちょと大丈夫なの。なんでも解決できるなんて豪語して……」
「学校で起きる問題であれば私達でも解決できるでしょう。最悪相談がない場合は、こちらから仕掛けましょう」
「仕掛けるってなにをするつもりなの?」
「ジェシカ様を虐めている人間をストーカーすればいいのですよ。
そのストーカーをジェシカ様が捕まえれば虐めはなくなるでしょう」
「それって犯罪だよね。ストーカーは流石にマズイんじゃあないかな?」
「知り合いにストーカーを頼むだけですよ。ただの尾行なんですから問題ないでしょう。それに虐めだって立派な犯罪ではありませんか?」
私は反論することができなかった。
まさか田中君がこんな形で虐めを解決しようとしてるとは思わなかった。
「とにかく一週間以内に依頼が来なかったら時間もあるので、手っ取り早く虐めを解決してしまいましょう」
私達は放送室を後にして、部室に戻ると、一人の女性が椅子に座っていた。
「ここがボランティア部?」
私は、この金髪の彼女を知っている。
ショートカットに金色の髪色。耳にはピアスをしている見た目は一度見れば忘れる人間はいないだろう。
女性には珍しい、あまり他人とは群れない一匹狼みたいな人だ。
まさか前田さんがここに来るとは思わなかった
「ボランティア部で問題はない。何か飲むか?」
田中君はメニュー表を前田さんに差し出した。
「ミルクティーでいいよ。結衣は何か飲む?」
前田さんは、私にメニュー表を差し出した。
「じゃあ私は、レモンティーにしようかな。前田さんありがとう」
「南でいいよ。クラスメイトじゃん」
南は、照れくさそうにしている。まさかこんな形でクラスメイトと仲良くできるとは思わなかった。
飲み物を机に置くと、田中君は席についた。
「それで俺達に頼みたい要件はなんだ?」
「実は、最近後ろをつけられている気がして……一応
調べてほしいの」
私は、放送室での田中君との会話を思い出した。
これは恐らく田中君が仕込んだことだろう。
「田中君、頑張ってストーカーをしている人間を捕まえようよ」
私はやる気満々だ。
「俺達も出来る限りは協力をする。ストーカーされる日や心当たりある人物を教えてほしい。後生徒手帳も見せて貰っていいか?」
田中君をメモ帳を手に取り、南に質問をする。
「生徒手帳は、教室にあるんだけど……取りに行かないと駄目なわけ」
「ストーカーを捕まえるとなると、前田さんの身辺も調べないといけないからな。
互いが同意していることの証明として、生徒手帳のコピーは絶対だ」
そんなルールがあることを私は知らなかった。
けど、田中君が仕込んだ犯人を捕まえるために、何故ここまで本格的に対応するのだろうか?
「手伝って貰うわけだからね。ちょっと待ってて取りに行ってくるから」
南は椅子から腰を上げ、部室を後にした。
「随分と慎重だね?」
「なぜ彼女がストーカー行為をされているのか分からないですからね。
たまたま、生徒手帳を落として標的にされたのかも知れません」
私は今のセリフに違和感を覚えた。
「ちょっと待って。今回の犯人って、ルーズベルトが用意したんじゃないの?」
「違いますよ。一週間は様子を見ると伝え忘れていましたか?」
確かに言っていた。
初依頼から、ボランティア部の域を超えた依頼だ。
「大丈夫なの?警察に言ったほうがいいんじゃないの?」
「彼女は素行が良くないですからね。警察が彼女のために動く可能性は低いでしょう」
「けど相手は犯罪者だよ……私達が踏み込んでいい問題なの?」
「踏み込みましょう。彼女は私達は頼りにしています。
決定権は部長であるジェシカ様にあります。どうされますか?」
いきなり部長として、こんな選択をすることになるとは思わなかった。
私に決定権があるかもしれないが、この状況で引き受けないという人間はいないだろう。
「私は引き受けた以上後悔はしたくない。
必ず南だけは無事に助けると、私と約束できる?」
「護衛には自信があります。この問題が解決できたら、彼女も部活に誘ってみましょう」
「ありがとう。ルーズベルト期待しているね」
私達ボランティア部は、初めて依頼を引き受けた。
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