第87話 騒動

樹里「ダメよ!そんな姿で出歩いちゃ!これをかぶりなさい!」


差し出されたのはコンビニ袋だった…


絢斗「なんだこれ?」


コンビニ袋を被らされ白の世界へ転移…ではなく、視界が『しわくちゃの白』という状態で樹里と鈴木さんに両脇をガッチリ固められて連行されている俺は両腕にあたる幸せな感触でイッパイオッパイである。

意味わかんねぇ。


しかし鈴木さんもなかなか…

グフッ、グヘヘヘヘ


樹里「絢斗、その気色の悪い笑いは私に向けられたものよね?それと鈴木さん?それはやり過ぎじゃないかしら。」

鈴木「やり過ぎとはなんの事でしょう?

ウチのタレントが怪我をしないように最善を尽くしているだけですよ?

そうでしょう?あ・や・と・くん♪」

絢斗「はい!あざまぁっす!」

鈴木「ほらね?」

樹里「あなた達…よぉくわかったわ。武井さん?いいのかしら?」

武井「自由競争ですから。

鈴木は凄腕の秘書で私の教え子でもありますし出来た人間です。任せるのもやぶさかではありません。

あねさん女房は…ってことわざもありますしねぇ。

里見さんも置いて行かれないように頑張ってくださいね。あなたには期待しておりますので。」

樹里「なっ!?」

鈴木「フフフ…くだらないミスはおかさないですよ」

樹里「とんだ伏兵がいたものね」


・・・・・・・・・・・・


控え室


桃「紅明ちゃん?さっきの男の子ってなに!?」

紅明「絢斗くんだけど?」

空「うわっ!名称で答えられて情報が全く伝わってこないという超めんどくさいヤツだ…」

虚無「園児だ、園児がいる」

真白「あらら…」


東雲の心の声

(絢斗くんが髪を切ったって聞こえた!

うぅぅぅ!見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たい見たいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!

そうだ!見に行こう!)


スッと立ち上がり部屋を出ようとする東雲に待ったがかかるのは当然である。


真白「あれ?東雲さん、どこ行くの?」

東雲「えーと、あのぉ、その、そう!

トイレ!トイレに行ってきます!」

空「なんだこのわかりやすい嘘つきは」

紅明「ダメだよぉ、勝手にうろうろしちゃ」

東雲「だってぇ…絢斗くんの髪切った姿とか気になるんだもん!」

虚無「ん?絢斗くんってナナくんの本名なのかな?」

紅明「そうだよぉ。絢斗くんのゲーム名がナナだよぉ」

東雲「ん?田所さんって絢斗くんの知り合いなんだっけ?」

虚無「何を隠そう、彼のゲームの師匠はこの私なのだよ」


東雲(むぅ!また次から次へと女の子がわいて出てくる!

しかも全員可愛いとか!むかつくぅ!!!)


真白「ん?東雲さん凄い顔してるよ?」

空「うわっ!嫉妬に狂った女の顔だ!」

東雲「どんな顔ですか!」


全員がスッと東雲の顔を指差す。


紅明「そんな顔?」

東雲「紅明ちゃんまで!」

紅明「むぅ!東雲さんはなんで僕だけ『ちゃん』付けなんだよぉ!

みんなは『さん』なのにぃ!」

東雲「ジー…『ちゃん』でしょ?」

桃・空・真白「『ちゃん』だ」

紅明「みんなまで!?」

虚無「おー、よちよち、皆イジワルだよねぇ、こっちおいでぇ」

紅明「うわーん!」

虚無「おーよちよち♪」


全員が思った。


なんの茶番だよ?


・・・・・・・・・・・・


応接室


応接室でサムネイルをどうするかなどの話し合いを終え休憩しているんだが…


絢斗「あのぉ…なんで両隣に座ってんすかね?」

樹里「私はママだからいいのよ?」

鈴木「私は代表なので。」


答えになってねぇ!


樹里「そうそう、絢斗に姉妹ができたわよ」

絢斗「姉妹?」

樹里「田所さんと東雲さんも私が担当する事になったのよ」

絢斗「えぇ!?忙しくなりすぎない?大丈夫なん?」

樹里「大丈夫よ。ブライドからはしっかり稼がせて貰うわ。フフフ…」

絢斗「お、おぅ。たくましいな」

鈴木「絢斗君には人の事より自分のデビューの事を考えて欲しいですね。

もう間近なんだしリスナーをしっかり掴めるよう企画もジャンジャン出して欲しいところね。」

絢斗「そ、そうですね。っていうか鈴木さん…近い…です」

鈴木「あら、気にすることじゃないわよ?親睦を深めるのも仕事ですもの。」


うぅ、大人の美人さんがおっぺぇ押し付けてくるぅ!いい匂いするし…


樹里「絢斗…?鼻の下が伸びてカピバラみたいな顔になってるわよ…

あーとも今のあなたのような顔に描き直そうかしら。」

絢斗「ハッ…す、鈴木さん!そういうの、良くないと思うんですよ!!」

鈴木「そういう先生こそキャバ嬢のように絢斗くんの内腿うちももに手を置くのはどうかと思いますけど?」

樹里「これは信頼の証のようなモノよ。この筋肉のチェックを許されている事こそママとあーとの絆よ」


そう、先ほどから樹里の手が俺の内腿をさわさわと軽~く撫でているのだ。

筋肉チェックというよりもただただ焦らされているだけなんだが…


武井「坊ちゃま、そろそろ。」

このままでは坊ちゃまがいたたまれない…


絢斗「うん!帰ろう!すぐに!それはもう疾風の如く!」

樹里「私もご一緒しても?」

武井「もちろんです。」

絢斗「鈴木さん、次はデビュー当日だね!よろしくお願いしますね!」

鈴木「はい、楽しみにしております。」


・・・・・・・・・・・・


控え室


空「さて、そろそろ私達も解散しますかね。」

真白「そうね、夜の配信もあるし帰りましょうか。」

桃「あ、帰りに軽く何か食べてこうよ~」

紅明「食べる~!」

虚無「あ、それ私も行っていいですか?」

真白「おいでおいで~♪東雲さんもおいで~」

東雲「いいんですか?あーしまだ個人デビュー前だしブライド入れるかもわかんないのに」

桃「いいのいいの、行こ♪」

紅明「東雲さんのキャラなら個人でもいけんじゃないのぉ?

しかも檸檬先生がママだし。

東雲さんも田所さんももう勝ったも同然でしょ?」

東雲「紅明ちゃん色々教えてね~」

真白「よし、行こっか~。何食べる~?」


カチャ…ゴン!


絢斗「いで!」


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