第86話 チェンジ

七条院家の屋敷


絢斗は昼食を食べに訪れていた。


絢斗「早苗さん、ご馳走様でした」

早苗「お粗末様でした♪」

絢斗「早苗さんのご飯はいつ食べても美味しいよね。武井さんが羨ましいよ」

早苗「あらあら、こんなオバサンを口説いてもいいことなんてありませんよ」

絢斗「いやいや、オバサンには見えないって!武井さんもだけどなんでそんなに見た目若いんですか?」

武井「適度な運動とバランスの良い食事。これだけで老化は防げます」

絢斗「そんな簡単な事だけで!?」

武井「そのがなかなかできないから老けていくんですよ」

絢斗「そんなものなんですかね。

あ、そうだ。早苗さん髪切ってくれます?」

早苗「あら、珍しいですね」

絢斗「ん~…樹里が髪切れって言うんですよ。」

早苗「へぇ、里見さんが…」

絢斗「なんか俺が変な目で見られるのが腹立つみたいで」

早苗「フフフ、なるほどですねぇ」

絢斗「でも学校で目立つのも嫌だし何とかならないかなぁ」

早苗「坊ちゃまはスタイルいいから髪まで整えちゃうと目立ちまくりですよぉ。あ、今の髪型のウィッグ作りましょうか!」

絢斗「ズラって体育とかでとれないですかね?」

早苗「けっこうな力で引っ張らないと取れたりしないですよ?」

武井「一時間後には届きます」

絢斗「おぉ!サスタケ!じゃあ運動しながら待ちます」


早苗さんとヨガしたり武井さんと組み手したりであっという間に一時間。


武井「届きました」

絢斗「はや!」

武井「美容師も到着しております」

絢斗「段取りの鬼!」


爺様が使っていた散髪用の部屋で美容師のお姉さんに髪を切ってもらいなぜかパーマまであてられた。


美容師「いやぁ、久々に燃えました!こんなスペシャル素材がまだ隠れていたなんて。

今後も是非!ご贔屓にお願いしますね♪

もちろん私が直接お伺いいたしますし何よりも優先いたしますので♪

ヘアカラーから筆おろしまでサービスさせていただきますぅ♪

なんなら料金いらないまであります!」

絢斗「おい…」


しかしさっぱりしたけどコレは…


絢斗「あのぉ、これってこのズラとあわないんじゃ…」

武井「届いております。」

絢斗「サスタケェェェ!!!」


早苗「坊ちゃま、とてもお似合いですよ。カッコイイです♪

夫がいなければお薬で眠っていただいたのち、既成事実を作ってしまうくらいは魅力的ですよ♪」

武井「ははは、私もそれでやられましたからなぁw」


は?


絢斗「いやいやいや、待って!

なんか今聞いちゃいけない真実がポロリと軽~い感じで出てきたんですけど!?」


美容師「あの!わ、私にそのお薬を分けてもらえ」

絢斗「ダメですよ!?」

美容師「絢斗くんにしか使わないから!」

絢斗「余計にダメですよ!?」


武井「さ、このウィッグを試してみてください」

絢斗「おぉ、ナチュラルだ」


少し緩めのウェーブがかかったウィッグの網目に地毛をくぐらせ櫛でならすと天パっぽい陰キャが鏡にうつっていた。


絢斗「いいですね、これ。地毛と馴染ませてるから取れる心配無さそうだ。これで学校で目立たなくて良さそうだよ。」

武井「つけっぱなしは頭皮によろしくないので学校以外は外しておいたほうが良いですよ。

若くしてゲーハーはちょっと…」

絢斗「え!?ハゲるの?俺の頭皮はそんなに不健康なの!?」


武井「…坊ちゃま、そろそろお時間です」

絢斗「ちょっと!何か言ってよ!」

武井「車をまわします」

絢斗「…行きましょうか。」


ズラは部屋に置いておいた。


髪を切って少し頭が軽くなった俺は気分良くブライド社に向かう。


・・・・・・・・・・・・


ブライド社ロビー


絢斗「ミーティングって言ってたけどオンラインで出来ないのかな?」

武井「配信が始まって不具合が無ければそれも可能でしょう。

今日はサムネイルの説明があると言ってましたし。

技術的な事だと思いますよ。」

絢斗「なら実際に教えて貰った方がいいのか」

鈴木「お待たせいたしました」

絢斗「鈴木さん、お疲れ様です。」

鈴木「お疲れ様です。檸檬先生はもう到着されてますよ。」


タブレットに向けていた視線をこちらに向けた鈴木さんがタブレットを落とした。


鈴木「え?あ、絢斗…くん?」

武井「ハァ…鈴木さん、気をしっかり持ってください。担当から外れるのは望んでいないでしょう」


武井さんは鈴木さんが落としたタブレットを拾い手渡すと釘を刺すように話しかけていた。


絢斗「やっぱり似合いませんか?」

鈴木「似合い過ぎててダメなんですよ!

今日はブライドのタレントが全員来てる!どうしよう!?

め、眼鏡は!?

たまにかぶってる帽子は無いんですか!?」

武井「落ち着いてください。

今タレントさんはどちらに?」

鈴木「収録終わりで控え室の方に全員いると思います」

武井「では控え室には入らずに応接室かグライドの編集部に行きましょうか」


なんでこんなに回りくどい事を…

そうか!

守秘義務みたいなヤツだな!

VTuberの顔バレとか一番くだらないミスだからな!


応接室に向かう途中、控え室の前を通過していると防音がきいてるのか中から女の子達の声がかすかに漏れていた…


カチャ


ん?


紅明「うわっ!かっこよ!!誰?

え?あ!絢斗くんだった!!

なになに?散髪したのぉ?」

絢斗「紅明先輩、お疲れ様です。気分転換に髪切ってみました」ナデナデ

鈴木「自然な感じで頭撫でてないで

行きますよ!

ウラヤマシイ…」


控え室からどよめきともとれる声がしてくる


桃「男の子の声がするんですけど!」

空「紅明ちゃんがかっこよ!とか言ってた!」

真白「え?なんで男??」

虚無「ん?この声…ナナくん?」

東雲「え?絢斗くんきてんの?」

樹里「じゃ、私は待ち人が来たようだから行くわ」


樹里が出てきて素早くドアを閉める。


樹里「ごきげんよう、絢斗、武井さ…ん?絢斗??

な、なんなの!?その破廉恥な姿は!悪魔なの?淫魔なの!?」

絢斗「ひどくね!?髪切れって言ったの樹里じゃないか」

樹里「ダメよ!そんな姿で出歩いちゃ!これをかぶりなさい!」


差し出されたのはコンビニ袋だった…


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