第53話 樹里・優しき淑女

檸檬「絢斗、行きましょ。大和さん、申し訳無いのだけれど今日は」

大和「ああ、なんだかそんな雰囲気じゃなくなったね。」

愛「ごめんなさい!!」


泣きながら外に飛び出した愛。

俺は声をかけることも追う事も出来ず、ただ樹里に言われるがまま自分の部屋へ戻った。


茫然自失。

そんな言葉が頭をよぎる。


なんでこんなにショックを受けてるんだろ…

所詮俺はボッチじゃねぇか。

また平和な時間が戻ってくるだけだろ?


檸檬「あなた、こっちにきなさい」

ソファに座っている樹里がポンポンと自信の隣を叩いている。

絢斗「ふぅ、なんだよ?説教でもする気か?」

檸檬「いいから」

大人しく樹里の横に座ると頭を引っ張られポスンと…

絢斗「あのぉ、樹里さんや?」

檸檬「なぁに?」

絢斗「これはいったいどういう」

檸檬「私の膝枕じゃあご不満かしら?」

絢斗「いや、そういう事じゃなくてだね」

檸檬「じゃあどうなの?」

絢斗「とても柔らかくていい匂いがして気持ちいいです。」

檸檬「そう。」

絢斗「でもなんで」

檸檬「あなたがあの子に裏切られてショックだぁ、樹里さん慰めて~って顔してたからよ」

絢斗「そんな顔してましたか。」

そう言って寝返りをうち下から樹里の顔を見上げると優しい微笑みを浮かべていて…


とても綺麗だと思った


檸檬「み、見ちゃダメ!」


樹里が両手で目隠しをしてくるのが可愛くって

「フフ、ハハハ」

檸檬「何がおかしいのよ!?」

絢斗「いや、樹里の顔が真っ赤だからさ」

檸檬「それはあなたもでしょう」

絢斗「ふぅ・・・ありがとう」


俺は樹里の太ももの付け根に顔をうずめるようにして腰に腕を回し軽く抱きついた。

檸檬「ダ、ダメ…」ビクン

絢斗「んうぅ」


樹里の香りと体温のあまりの心地良さに顔をうりうりっと押し付けると樹里はビクビクっと身体を震わせる。


檸檬「絢斗…ダメだったら」ビクン


樹里は俺の頭を押して離そうとするが力が入っていない上に腰に腕を巻きつけられているため余計に身動きが取れないようだ。

俺も樹里の身体の柔らかさに自然と腰に回した腕を下げてさらに柔らかな部分に触れていた。

檸檬「あやと…」

樹里は俺の頭に倒れ込むようにしてきたので柔らかな胸が頭に…


そんな時


コンコンッとドアがノックされた。

2人ともハッと我に返りガバッと離れた。


絢斗「はい」

早苗「坊ちゃまよろしいでしょうか?」

絢斗「どうぞ」

早苗「あらあら、お邪魔でしたか?」


早苗さんは不自然にソファの両サイドに座る俺と樹里の顔が赤くなっているのに気づいてクスッと笑う。


檸檬「そんな事…ないです…」

早苗「東雲さんの事で」

絢斗「ああ。」

早苗「余計なお節介はやめなさいって武井に言われたんですけど、このままじゃあの子も坊ちゃまも後悔すると思いまして。あの子は素直で純粋な分不器用なだけなんですよ」

檸檬「行ってあげなさいな」

絢斗「樹里…俺は…」

檸檬「泣いている女の子を放っておくなんて見損みそこなうわよ?」

絢斗「わかった。ありがとう、行ってくるよ。」

檸檬「ああ、それと。画像は消して無いわよ。違うフォルダに移しただけだから。」

絢斗「伝えとく。」

檸檬「帰ったら私ともその、プ、プリクラ撮ってよね」

絢斗「うん、一緒に撮ろうな」


~~~~~~~~~~~~~~


絢斗が出て行った部屋

檸檬「私もバカね…」

早苗「あなたは優しくて素敵な淑女レディですよ。坊ちゃまは幸せです」

檸檬「私は・・・臆病なだけです」

早苗「坊ちゃまとあなたは少し似ていますね。臆病で、優しくて、不器用なところとか。

お茶、淹れますね?」

檸檬「お願いします…」


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