第30話 武井ですが

この数日間は激動だった。

坊ちゃまがやっと何かと向き合おうとしている。


VTuber


もう表舞台には立ちたくないと泣いていた少年を知っているからこそ、

今の坊ちゃまにはピッタリだと思った。あの才能を埋もれさせるわけにはいかない。会長からもお願いされてしまっている。何より俺達夫婦の天使だからな。


早速動かねばな。

「武井ですが、VTuberの事務所をあたってもらえますか?ええ、坊ちゃまが前を向くきっかけとなりえる事案です。よろしく。」

七条院グループ代表代理を任されている男に連絡。


グループ傘下の子会社がヒットしたようだ。

「七条院グループ会長秘書の武井ですが。本社の血縁の方がそちらの会社を見学したいという事です。日曜午後に訪問しますのでくれぐれも粗相の無きよう、お願いします。」


訪問はうまくいった。後輩の鈴木がこの会社にいたのはラッキーだったな。社長が坊ちゃまに惑わされたようだが仕方あるまい。


次はイラストレーターか。

「武井ですが、実力のあるイラストレーターをリストアップして送ってください。ええ、坊ちゃまのキャラをお願いする事になるのでその辺りも考慮してください。よろしく。」


リストを見た坊ちゃまが1人のイラストレーターに興味を示された。

「武井ですが、柚子檸檬というイラストレーターとアポをとってください。ええ、迅速にお願いします。」


坊ちゃまが自ら契約を取りに行かれた。なんて良い日だ。

ん?さっきのおデb…ぽっちゃりさん?

話を聞くと彼が柚子檸檬ではないようだ。まずった。

坊ちゃまのスマホのGPSによるとレジャービルだな。


部屋の前まで行くと坊ちゃまが歌っていた。いつぶりだろう…

おっと、話が終わりそうだな。


月曜日

坊ちゃまからメール。数枚の写真とごめんなさい…だと!?

これは問題を起こして迷惑をかけるかもという事だ。

いつも全力ダッシュで3分の場所で待機しているので教室までジャスト3分だ。

絡まれているが坊ちゃまが対応しているので動画撮影だな。

校長に連絡するとすっ飛んできた。

坊ちゃまを囲んでるバカ3人の

情報を担任から聞き出し連絡する。

「武井ですが、坊ちゃまがイジメにあっている。今から言う3人の身内を処分してください。わかってますよね?」

校長には動画を見せ対処するよう促すとあっと言う間だった。

この件で坊ちゃまにマイナスになるような事態になれば七条院グループは黙っていないと伝えておいたので当然だろう。

しかしあのお嬢さん、ふふ、坊ちゃまも隅に置けないですね。

東雲愛さんか。


火曜日

坊ちゃまから迎えを頼まれた。

珍しいなと思っていたが坊ちゃまの後から東雲さんが見えたのでお節介を焼いてしまった。


部屋で坊ちゃまを怒らせてしまったようだがうまく対処したようだ。なかなかやるな。

もう遅いし泊まるように伝える。少しだけ話も聞いてみたいしな。

「武井ですが、坊ちゃまのクラスメイトの東雲愛を今夜屋敷に泊める事になりました。いいように連絡しておいてください。」


軽く夕食を取りに風呂に入るよう伝える。

妻に坊ちゃまのパジャマを用意させ東雲さんの着替え用にするよう指示しておいた。

坊ちゃまの反応が想像できる。

東雲さんと一緒に居るときは表情が素直になっている事に本人は気づいて無いだろう。

彼女に少しだけ期待してしまう。


「何か些細な事でも困ったら連絡しなさい。」

連絡先を渡しておいた。


東雲さんが部屋に戻って数時間。

どんな話をしているんだろう。


坊ちゃまと仲良くしてくれてありがとう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る