第29話 グライドプロジェクト

柚子檸檬side


また何かの依頼がきた。

私の画力えぢからを評価してくれるのは嬉しいのだけれど、私の画に見合う作品やキャラを持って来れないのはいただけないわ。


私は人と会うのが好きではないので全てネット経由での取引にしているのだけれど今回の依頼要請は個人から?珍しいわね。動画で説明を要求するとすぐに返信がきた。文章ではなく動画を要求するのはその依頼者の人柄が少しでも見えるから。基本的に男性の依頼は受けないようにしているからこの時点で判断出来るのも動画の利点ね。

早速送られてきた動画を…

え?嘘!この名前って…

でも見た目が違う!だってあの人はもっと線が細くて綺麗で…でも顔があの人だわ。雄々しく美しく成長したという事なのかしら。

ディスプレイに映る絢斗様は面白い事を始めると言っている。

私にプロデュースして欲しいと…。こんな事ってあるものなのかしら?私の初恋の相手が数年後にアプローチしてくるなんて…。


私の家に来ていただいてゆっくりと打ち合わせでも…無理。このゴミ屋敷に招くなんで自殺行為だわ…。

どこか、どこか二人きりになれる場所は…ホテル?論外ね。そうだわ、近くのカラオケルームなら!試す感じで不自然さは無く且つ二人きりになれる防音密室。完璧だわ。

早速行動に移した私は一番お気に入りの服を…ダメ!これは私の顔が見えてしまう。ヴェールのついたモノがあったはずよ。ふふ、これで私の顔が赤くなろうがフニャろうがデレようが…


入った事も無いビルで二度と使うことは無いであろう会員カードを作り後から人が来る事を伝え部屋を借りた。後は下僕1号に動いてもらえば。


そして時はきました。いよいよ絢斗様とご対面よ。

ああ、本物の絢斗様だわ。動画で見るより大きくて逞しい…。何よ、サングラスとマスクが邪魔よ!

ああ!ステキ!本物だわ!

ダメよ、今回は私がお願いされる立場!絢斗様ほどの方なら話し方1つで私の内情を見透かしてしまう!

冷静に淡々と。


凄い…

なんであんな声が出せるの?

まるで七つの音をミックスして無限の声を奏でているような…。

七色の声を持つアーティスト。

これしか無いわ!

早速帰って全てを演じれるコンセプトのキャラを!この興奮が薄れる前に!!




ブライドside

浜「まずグライドは絢斗様1人だけのプロジェクトよ。イラストレーターも武井さんの方でめぼしい先生にあたると言っていたし。イラストレーターが決まり次第静止画の状態でもいいからチックトックで歌ってみたのショート動画、ドイッターで自己紹介とか告知、配信できる状況になったらUTubeでチャンネル開設からのデビュー配信!これで決まりね。」

鈴「では私はグライドプロジェクトのリーダー兼マネージャーとしての行動を開始します。山崎、後のことは任せたわよ。社長も一期生の管理、二期生のオーディション、しっかりお願いしますね。」

山「鈴木先輩、お誘いありがとうございます。私がVの仕事に携わる事ができるなんて夢のようです。」

鈴「あなた、昔からそっち系好きだったものね。しっかり社長秘書としての務めを全うしてちょうだい。でも気をつけてよ?情報の漏洩は私も庇い立てできないわ。」

山「はい、気をつけます。」

浜「では、本日よりグライドプロジェクト、スタートします!絢斗様のサポート、頑張りましょう!」


ふぅ、これで色香に惑わされた社長を絢斗様と分離出来たわ。

まさか社長があそこまで墜ちるとは思いも寄らなかったわ。

先輩からもお願いされたし私が絢斗様を守らきゃ!そして絢斗様がやりたいことのサポートを完璧にこなして魅せる!!

でも…『ゆみさん』か。

べ、別に羨ましくなんか!

…あるわね。

私も名前で呼んで頂けるようにしましょう。

麻美あさみさん』

あの声で呼ばれたら…

はかどっちゃうかも!(なにが?)

ふふふ、楽しみだわ。


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