第26話 命名


絢斗

「あのぉ?なにしとん?」


東雲

「ゼェ、いや、ゼェ、急に、ゼェ…」


絢斗

「もぉ!誰かに見られたら面倒だから乗ってくれ!」


ギャル子さんを乗せたリムジンは何事も無かったかのように走り出す。


絢斗

「で、なんでついて来たんだ?」


東雲

「ゼェゼェゼェ…ふぅふぅ…」


絢斗

「とりあえずこれ飲んで落ち着け。」


備え付けの冷蔵庫から水を出して差し出すとグビグビと飲み干すギャル子さん。


東雲

「ぷはぁ!あんがと。」


絢斗

「で?」


東雲

「いや、絢斗君が急に走り出したから何かあったのかなぁって?

昨日の事もあるし心配したんじゃん」


絢斗

「それで全速力の俺に付いて来たと?」


東雲

「早すぎて離されてたけどね。」


絢斗

「それでもすげぇな!」


東雲

「まぁね~♪体育は得意だよ」


絢斗

「はぁ…で、どうすんだ?」


東雲

「なに?」


絢斗

「いや、だから!送るから行き先は?」


東雲

「今日撮影無いから暇なんだよね」


絢斗

「じゃあ家でいいな。」


東雲

「暇だし絢斗君の家で!」


絢斗

「えぇ…」


東雲

「なに?こんな可愛い子が一緒に居てあげるって言ってんのに不服なん?」


絢斗

「何その謎の上から目線…」


東雲

「あ~、そっかぁ。

これが見えないから拗ねてんだぁ」


そういってギャル子さんは腕組みしてスライムを持ち上げる。


なんって破壊力だ!


東雲

「女の子はねぇ、

男の子の視線がどこに向いてるのかすぐにわかるんだぞぉ」


絢斗

「べ、別に!みみ見てないにょ…」


東雲

「ふぅん?見たく無いんだぁ」


ギャル子さんが腕組みした腕を上下に動かすもんだから

ゆっさゆっさと…ゆっさゆっさ…


絢斗

「ゆっさゆっさ…」


東雲

「そうだねぇ、

ゆっさゆっさだね~」


爺様!たしゅけてぇ!!


東雲

「これ、いらないんだぁ?」

ゆっさゆっさ


東雲

「ほんとにいいのぉ?」

ゆっさゆっさ


絢斗

「武井さん、屋敷へ。」


武井

「・・・わかりました。

お嬢さん、今日見た事を他言されると

ベトナムに引っ越す事になるかもしれませんが」


東雲

「あ、お構いなく。私口はかたいんで。」


屋敷に到着したのでギャル子さんをリビングへ通す。

すでに連絡されていたようで武井さん嫁がもてなしてくれている。


東雲

「スッゴいお家…お屋敷!?

車もなんかダックスフンドみたいだったし」


絢斗

「プッ、アハハハwダックスってw」


武井さん嫁、物怖ものおじしないギャル相手に盛り上がってるな。

今の内に柚子檸檬先生のメッセージを確認だ。


絢斗

「着替えてくるからお茶飲んでて。」


そう伝えて聖域へ向かう。

急いでパソコンを起動してチャットツールを確認する。


ラフ画が数枚。

男の子とも女の子ともとれる綺麗な顔つき

左右対称に白黒の仮面

何種類かの帽子や髪型


中性的といったリクエストからこれだけのモノが生まれたんだ…すげぇ。


『命名 七色あーと

【なしきあーと】と読むのよ。

七色の声を持つアーティストの絢斗だから七色あーと。

いいでしょ?』


七色あーと…なしきあーと…ナシキアート…


うん、いいな!凄くいいな!!

最高じゃないか!!七色あーと!!

さすが柚子檸檬先生だ、

センスあるな!

あの人にお願いして良かった。

なんかカラオケで接待させられただけだと思ってたけど。


自然と拳を握りしめて感動していた。


東雲

「七色あーとかぁ、いいじゃん♪」


絢斗

「は…?

げぇ!!??」


東雲

「はげてないし!?」


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