第21話 神絵師【柚子檸檬】



帰りの車の中で武井さんが用意してくれたタブレットで

フリーの絵師さんのリストを見ている。

1人だけずば抜けて美しい絵を描く人がいるんだが

現在どこにも所属していないフリーランスで連絡が取りずらい…と。

気に入らない相手とは取引しないという厄介な人物らしい。

要するに金じゃ動かないって事だよな。

そして誰も正体を知らない…か。


なるほど。

どうせなら丁寧な仕事をして欲しいから

頼むならこの柚子檸檬ゆずれもん先生がいいな。

そしてこの人の良いところは

一度も会わずに済む可能性があるってとこだ。

なにかある度に会って打ち合わせとか有り得んからな。


屋敷に到着したので武井さんに話てみる。


武井

「ツテを探して連絡をとって見ます。

しばらくお待ちください。」


武井さんのこの万能感よ!

さっきのポンコツっぷりが嘘のようだ。


嘘だよね?


で、ツテってなんだ?

ボッチの俺には一切関係ない言葉だな。

武井さん夫婦?

家族みたいなもんだし

ボッチの支障にはならんのだよ。


武井

「坊ちゃま、

七条院グループ内で1人ヒットしましたので

早速連絡を取らせたのですが

正体もわからない人と取引はできないと言っているようです。」


それはお互い様なのでは!?


絢斗

「もし契約できるんなら長い付き合いになるし

俺のことは話してもいいですよ。

どうせ会う事なんてないはずだし」


武井

「わかりました。」



神絵師と呼ばれるくらいの人だ。

これくらいの事で諦められないよな。


武井

「坊ちゃま、

信用出来ないから動画を送ってこいと言っているようです。」


おおぅ、なかなかの用心深さ。

動画ってなんそれ!?

何を撮って送れと?

とりあえず自己紹介と取引のお願いをしてみようか。


絢斗

「武井さん、スマホでいいから撮ってくれます?」


武井

「どうぞ」


絢斗

『初めまして。七条院絢斗です。

今回VTuberとしてデビューしようと動いています。

柚子檸檬先生に是非、

僕をプロデュースして欲しくてこうしてメッセージを送らせていただきます。

宜しくお願いします。

では、良いお返事をお待ちしております。」


こんな感じでお願いしてみたんだが…

すぐに返信がきたようだ。


武井

「坊ちゃま、坊ちゃまの連絡先を送ってこいと言っておりますが?」


絢斗

「構わないです。お願いします。」


すぐに俺のスマホに連絡がきた。


今から指定する場所にすぐにこれますか?


えぇ…会わなくていいんじゃなかったのか?

でもチャンスだしなぁ。

やると決めたんだから最高のパフォーマンスでリスナーに喜んで欲しい。

指定されたのもそう遠くはない駅前だ。


絢斗

「武井さん、もう一度車を出してもらってもいいですか?」


武井

「もちろんです。」


絢斗

「では●●駅へお願いします。」


30分ほどで駅へ到着。


武井

「では私はこの近くで待機しておりますので

何かあればすぐに連絡を。

ワンコールでもあれば駆けつけます。」


絢斗

「ありがとう、お願いします。

では行ってきます。」


さて、どんな人物が出てくるのやら。

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