第16話 社長【浜崎】秘書【鈴木】

浜崎side


はぁ…憂鬱だわ。

グループ上層の人がこんな小さな子会社になんの用があるって言うのよ!


鈴木

「社長、あと10分で到着なさいます。ご準備を。」


浜崎

「わかったわ。幸田には?」


鈴木

「伝えてあります。」


浜崎

「あなたが優秀なのが救いだわ。

本当にありがとう。

行きましょう。」


幸田と合流して正面玄関に向かう。

もう到着するはず。はぁ…


3人で玄関前に並ぶとちょうどリムジンが到着した。


豪華なリムジンで送迎ですか?

いいご身分ね。


運転手が降りてきて後部ドアを開ける。


あら?運転手の方、どこかで見たことあるような…。

そんな事より降りてきたVIPよ。


おしゃれなスーツを着こなしている高身長で体格の良い青年?


モデルみたい。


マスクとサングラスでどんな人物かはわからないけど

薄めのサングラス越しから感じる視線…ただ者じゃないわね。


応接室に通して話を伺う事にした。


いきなり私達の城を徘徊されるのは気分の良いものじゃないし。


少し話しただけでわかる。

偏見を持たない誠実な方だ。

ビルのセンスを男性では真似できない、

清楚で華やかさがあると褒めてくれた。

なんて嬉しい事を言ってくれるんだろう!

私は承認欲求が満たされる感覚に嬉しくなって

私達が何を望み何を成そうとしているのか熱弁してしまった。


絢斗様もうんうんと話を聞きいてくれて「いいね!」と言ってくれた。

そこで本題を切り出された。


男性VTuber…


一瞬今までやってきた全てを根底から覆される思いをしたけど違った。


アドバイスが欲しいとの事。


ホッとした。


この人がそんな無慈悲な事をするとは思えないもの。


ただ、そのVTuberを目指している相手がヤバかった。


七条院グループの血縁者。


関わり合いたくない、

どんなボンボンが来るのか不安しか無い。

しかも人払いまでしなきゃいけないなんて…

ヤバい感じがビンビン伝わってくる!

もしかして我が社のタレントのガチ恋勢で権力を使って会いにくるとか!?

いやいや、絢斗様はそんな事言ってなかったし…

うぅ、なんか怖いぃ。


お腹痛くなってきたぁ…


・・・・・・・・・・・・


鈴木side


ハァ…

本社がらみの訪問ですか。

社長も溜め息つきっぱなしだし

面倒な事にならなければよいのだけれど、

そればかりは来社される方次第だもの。


そろそろ時間ね。


鈴木

「社長、あと10分で到着なさいます。ご準備を。」


訪問内容は事前に知らされてはいるけれども

何故今更本社の方が来社されるのか読めないものだから社長も不安を隠しきれていないし…


順調に成長してきた我が社に本社が手を出してくるとか最悪なんですけど。


いけないわ、

私まで不安にのまれては社長がさらに不安を感じてしまう。


お出迎えするために玄関前で並ぶとすぐにリムジンが到着した。


このリムジンのナンバー…七条院様の車だわ!

まずい…恐らく乗っているのは七条院家の跡取り。


たしかご子息は事故で亡くなっていたはず…

という事はあの!?


まさか…ね。

でもあのリムジンは…。


リムジンから降りてきたのはモデルみたいな高身長の男性だった。

サングラスにマスクですか。

でも私は誤魔化されたりしませんよ!


この横顔、

あの頃の面影があります!


絢斗君が中学生の頃に出ていた最後のドラマ、

ジャ●系のむさい演技とは比べ物にならない本物の演技!

そしてあの美少年っぷり!

忘れるものですか!!


私の動揺に気づいた運転手の男性はこちらに視線を移して目で合図を送ってきた。


『黙っていなさい』と。


軽く頷き返すと運転手は微笑んでいた。


っていうか運転手!

武井先生じゃないですか!

何をしれっと制服着てるんですか!?


武井先生は私の憧れの先輩であり教官であり師匠でもある方です。


秘書道を1から叩き込んでいただきました。

本来なら私も七条院様付きになれるはずだったのですが

修行先のブライドで頑張っていたら七条院様がお亡くなりになってしまい

ブライドに腰を落ち着かせることになったのです。


浜崎社長の事もほっとけないですし。


応接室に入ると自ら絢斗君…いえ絢斗様だと名乗られました。


社長は気づいてないようですがそれも仕方ありません。


目の前にいる絢斗様は三年前のとは良い意味で別人のように成長しているのだから。


話を聞いているだけでもわかる。

VTuberを目指しているんですね。


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