第17話 ボスゴブリン

 ボスと思われるゴブリンはこれまでの非にならないくらい強い。盾も使うし、槍も剣も棍棒も使う。しかもどれもかなり上手い。レインがいなかったら俺達は既にミンチだろう。


 「スイッチ」


 さっきから何回これを繰り返しているだろう。そろそろ俺の魔力も尽きてきた。入れ替わりを使えるのもあと2回くらいだろう。レインはまだ魔力はあるみたいだがスタミナがもう無さそうだ。


 「レイン、セレナ一気に畳み掛けるぞ。」

 「わかった。」

 「私はいつでもいいよ。」

 「行くぞ!」


 俺とセレナが先行するそしてレインが後に続く。俺がまず切りかかる。盾で防がれるがその隙にセレナが切りかかる。そしてそこにレインが突っ込む。もちろんレインは金剛力を発動している。そして


 「スイッチ!」


 俺とレインが入れ替わり、俺の剣がゴブリンに突き刺さる。だがまだ絶命はしていないようだ。


 「フィーネ!スイッチ!」


 俺はフィーネと入れ替わった。そしてフィーネがゴブリンの頭を槍で貫いた。終わったのだ。


 「俺達は勝ったのか?」

 「よかった。私も最後に活躍できたし。」

 「フィーネはいつも活躍してるぞ。フィーネのバフが無かったらここまで戦えた自信が無い。」

 「そう?なら良かったっ。」

 「早く素材取るよ!これだけあったらいくらになるかな?鑑定が楽しみ!」

 「そうだね。早くしないと他の魔物が来ちゃうかも。」

 「じゃあ手分けして集めよう。」


  倒したゴブリン達の素材を集めてからだいたい30分が経った。

  「俺達いったい何匹倒したんだ?最初見た時俺達が戦ってたのを合わせても50匹ぐらいだったよな。軽く50匹は超えてる気がするが…。ちなみに耳いくつ取った?俺は56個だ。」

 「僕は34個。」

 「私とフィーネの分合わせて60個だよ。」

 「今だけでも75匹かよ。あと20匹位はいるぞ。」

 「早くやって帰ろうよー。」

 「そうだな。」


 それから15分ぐらい経ち、やっと全ての素材を回収し終わった。あとは埋めるだけだ。


 「埋めるの面倒だな。」

 「でも埋めないとダメなんでしょ。」

 「そーなんだよなー。やるしかないか。もうひと頑張りするぞ!」

 「「「おー!」」」


 それからまた1時間位が経った。この埋める作業がとんでもなくしんどく、休憩を挟みながらやってると1時間もかかってしまったのだ。


 「さて帰るか。」

 「早く帰ろー。」


 俺達は街に向かって出発した。帰りながらわかったことだが、俺達は戦いながらかなり奥まで来ていたみたいだ。途中にもゴブリンの死体が落ちており、素材を回収し、埋めながら帰った。そして俺達が街に帰り着いたのはそこから1時間位経て夕方の5時頃だった。


 「やっと着いたー!」

 「長かったな。」

 「ねえねえ早く売りに行こうよ。」

 「セレナはお金好きだな。」


 俺達が回収カウンターに向かおうとするとローラさんに引き止められた。


 「遅かったじゃない。そんなに血まみれになってどこで何してたのよ。」


 とっても心配してくれていたみたいだ。


 「心配かけてすみません。初めは普通に薬草取ってたんですが、その後ゴブリンに出くわしまして…。」


 俺はその後何があったかをざっくりと説明した。声が他の冒険者達にも聞こえていたみたいだ。


 「お前らそれって本当なのか?」

 「本当だったらやばいぞ。その数ボス級もいるだろ。あいつがいたらゴブリンが無限に増えるんだ。」

 「本当ですよ。」

 「明日から討伐隊だな。」


 他の冒険者達も同様に焦っているみたいだ。やはり俺達が会った群れは変だったようだ。


 「買取に行ってもいいですか?」

 「あぁ。引き止めて悪かったな。」


 ここの冒険者達はそれぞれが仲が良く、お互いに協力しあっているみたいだ。ファンタジーによく居る、新人を煽って来るようなやつはいないみたいだ。


 「すみません。買取りお願いしていいですか。」

 「わかりました。カウンターに買い取って貰いたいものお願いします。」

 「はい。」


 俺達はレインのアイテムボックスから麻袋に入ったゴブリンの耳と薬草を取り出した。帰りに回収した分もあるので、薬草が160株、耳が202個あるはずだ。なんとか俺達は101匹も狩っていたのだ。それにしても多すぎる。どこかの話に出てくる犬じゃあるまいし。


 「ゑ!」


 受け付けの人から変な声が出た。


 「この量どうしたんですか?薬草はちょっと多いくらいですが、この量の耳はおかしいですって。」

 「それはゴブリンの群れに出くわしたからで…。」


 俺はさっきローラさんにした話をもう一度した。


 「それは災難でしたね。初日からそんな目に会うとは。これはこちらで鑑定しますね。数が多いのでしばらく待っていてください。後で呼びますので。」

 「分かりました。」


 俺達がカウンターから離れると、さっきの冒険者の人がこちらにやってきた。


 「俺はギランって言うんだ。よろしくな。それにしてもあの量はすごいな。よく生き残った。もしかしてお前らが昨日来たユニークスキル持ちか

?」


 「はい。そうです。俺はレイって言います。よろしくお願いします。」

 「敬語はいいって。俺のことはギランって呼んでくれ。ここの冒険者ギルドは仲の良さが取り柄だからな。敬語なんていらないんだよ。」

 「そうなのか。ギランこれからよろしく。」

 「あぁ。」



 「なんなんですか、これは!」


 急に叫び声が聞こえてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る