第9話 門出
今日は俺がこの家にいる最後の日だ。今両親と一緒に夕飯を食べている。これも最後だと思うとなんだか悲しい気持ちになる。
「レイ本当に行くんだな?」
父さんが聞いてくる。
「あぁ。父さんも母さんもこれまで本当にありがとう。」
「レイちゃんもうちょっと何か言うことないの?今日で最後になるかもしれないんでしょ。」
「ラフィー辞めなさい。こういう時男は語ったりしないもんだよ。父さんが家を出る時もこんな感じだった。」
「あなたは心配じゃないの?成人した子供達だけで、冒険者になろうとしてるのよ。それを笑って送り出すことなんて私にはできないわよ。」
「母さん、そんなに心配することないって。近くまで来たら帰ってくるし、根性の別れじゃないんだから。」
「本当に怪我とかしちゃダメよ。」
「だから大丈夫だって。」
「そんなことやっとらんと早く飯食うぞ。せっかくラフィーがご馳走作ってくれたんだから。」
今日は母さんが俺の門出を祝ってご馳走を作ってくれている。俺達が住む村はそんなに大きくはなく、ご馳走と言っても俺が前居た世界で食べてた物よりかは質は落ちる。でも、母さんや父さんがいつもより良い肉を買って来てステーキにしてくれているんだ。こんなに嬉しいものはない。
そこからは無心で肉を食べた。そして最後の晩餐が終わり、部屋に戻った。
「今日でこの部屋ともお別れか…。」
持って行きたい物も沢山ある。しかし、持てるものには限りがあるのだ。次帰ってきた時、アイテムボックスのスキル持ってたら回収して行こう。
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今日で僕もこの村とさようならか。僕は両親や親戚がこの村にずっと住んでるわけじゃない。レイの家族と会う時だけ人間のフリをして地上に来るだけだ。でも、ここで15年生きてきた記憶がある。その場所から離れるのはやっぱり辛い。もう明日の用意して寝よっかな。
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「フィーネ気おつけて行ってくるのよ。体調には気おつけて!悪い男に騙されちゃダメよ。」
「お母さんそれ何回言うのよ。いざとなったらレイ君が守ってくれるから大丈夫なの。」
「レイ君がいるなら多分大丈夫だと思うんだが…やっぱり心配なものは心配だな。」
「お父さんもお母さんも心配し過ぎだって。お金に余裕があったら手紙も書くし。近くの街に来たらみんなで帰ってくるから。」
「わかったわ。何かあったらすぐ帰ってくるのよ。明日も早いんだし早く寝なさい。」
「うん。お父さんもお母さんもおやすみなさい。」
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集合場所に向かう前に妹が泣きついてきた。
「姉ちゃん行かないでー。」
「セリアそんな事言わないの。」
「そうよ。お姉ちゃんとはまた会えるんだから。」
最近妹のセリアがずっとこんな調子だ。私だって家族と別れるのは少し悲しい。でもレイン達と一緒に冒険に行くことの方がもっと楽しみなんだ。
「セレナが気をつけて行ってきなさい。」
「何時でも帰ってきていいのよ。」
「うんわかってる。お父さんもお母さんもこれまで本当にありがとう。行ってくるね。」
そうして私は集合場所に来た。が、時間を間違えたみたいで、2時間近く待ったのはみんなには内緒だ。
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「行ってきます。」
「レイ、気をつけてな。」
「たまには手紙書くのよ。お金がなかったらそれ以外の方法でもいいから生きてること教えてね。」
そうして俺は家を出発した。俺が集合場所に着いた時にはみんな集合していた。
「遅いよレイ。」
「すまんすまん。寝坊しちまった。」
もちろん嘘だ。何を持っていこうか悩んでただけだ。持ってきたのは、小さい頃フィーネに貰ったアクセサリーだ。2人でお揃いの指輪を買った。後は置いて来てしまった。置いて来た理由は、必ず帰ってくるという決意があったからでもある。
「さあ行くぞ!」
「なんで遅れてきたレイ君が仕切ってるのよ。」
「そこは'おー!'とか言ってくれよ。せっかくの門出なんだから突っ込んでないで。」
「じゃあ仕切り直して、みんな行くぞー!」
「「「おー!」」」
結局レインの掛け声で出発した。ここから1番近くの街までは歩いて1日位。着いたら宿を取って明日には冒険者ギルドで冒険者登録だ。
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