第10話 私達の明日
その日、私の魔法、黒い霧は消えた。
私の意識は、メムナの中にいる。ずっと一緒にいる。
メムナの中に入ったことでいろんなことを知った。
今は戦争中だということ。この前、と言っても、もう8年も前のことみたいだけれど、あの巨大な生物が壁を破り、たくさんの日に死んだあの日からずっと戦争状態らしい。
相手は壁の外で生きてきた人達。
壁の外にある、別の国。別の壁の中の人。
理由はわからないけれど、食糧危機だとか魔力不足だとか、はたまた上層部がやらかしただとか色々憶測が立てられてるみたい。
私が壁の内側で魔法を発動させて、壁の内側の1割は黒い霧に覆われて、その部分は廃棄しないといけなくなったらしい。それに壁は敵によって破壊され、なくなり昔の暴走した魔導機も脅威になって、戦況はかなり不味かったらしい。
けれど、私の魔法……黒い霧が敵側にも損害出したことで、落ち着いて状況を立て直すことができたのだとか。
昔から外で活動するための戦闘組織は用意されてきた。それを対人用に作り替えたらしい。それに強力な魔法を使える人は上層部に招集されて、その組織入らされて戦わないといけない。
メムナも戦いに参加しないといけない。メムナの魔法は強力で、魔力自体を攻撃できる。だから魔力の波長とかもわかるみたいで、黒い霧が私に似てるってわかったみたい。
黒い霧は外部からは死の霧だとか言われてたみたいで、やっぱり多くの人を殺してしまったみたい。でも、私はこれでいいって思ってる。
メムナを助けられたから。
メムナがありがとうって言ってくれたから。
ずっとメムナを守って、助けて、一緒にいる。
それが私の目標。
私は魔力だけの存在みたいになってるみたいで、魔力を使ってメムナを助けられる。魔法だった時の経験で、魔力でできることが沢山増えた。魔力で防壁を貼ったり、強力な魔力弾を放ったり。もちろん魔法も使える。
これでこれからもずっとメムナを助けていく。
「シア……?起きてる?」
考え事をしてた思考が一気に現実に戻ってくる。
メムナが起きたみたい。
「起きてるよ。おはよ」
「おはよう……ふぅぁ……」
眠そうに大きなあくびをする。昨日は遅くまで戦闘訓練があって疲れてるみたい。
「大丈夫?」
「うん……一晩寝たし……シアもいるからね」
「……そっか。私もメムナといると元気だよ」
メムナは結構好待遇を受けてるみたいで、自分用の部屋もあるし、魔力に不自由することもないみたい。それぐらいメムナの魔法は強力だということなのかな。
「んじゃ……いこっか」
「うん」
準備をして、集合場所に歩いていく。
この宿舎はたくさんの人がいて、いろんな人とすれ違う。
黄色い魔力……白い魔力……紫の魔力……灰色の魔力……
魔法そのものになった私には魔力の方がよく見える。魔法まではわからないけれど。
集合場所について、上の人が来るまで待っていても、メムナとの近くに来る人はいない。どうやらメムナは……少し近づきづらいみたい。
周りの音を聞く感じ、私の魔法……黒い霧から生きて出てきて、何回も近づいていても大丈夫だったのが怪しいだのなんだの。それに黒い霧が消えたのがメムナが近づいていた時というのも、拍車をかけているみたい。
「今日の訓練はどんなのかな」
「そうだね……昨日は魔力強度だったし、魔力操作とかかも」
「えー……私細かい操作苦手なんだけどなー」
メムナはあんまり気にしてないみたいだけれど。
それにどれだけメムナが嫌われてても、私がいるから大丈夫。私がずっと。
私の声は、メムナ以外に届けることもできないわけじゃないけれど、基本的にはメムナの頭の中で話している。だから側から見たら、メムナは黙っているのにたまに笑う人になっているのかも。
「あ、きたよ」
「じゃあ、今日はー」
訓練が終わって、眠って、明日が来る。
戦場にも行って、戦う。
そんな日々が続いていく。
明日戦場で死んじゃうかもしれない。いや、今にも敵が攻めてきて殺されるかもしれない。
けれどそんな心配はメムナがいれば、一緒にいれば怖くなかった。メムナを守るためなら、何にだって負けない気がした。
いろんなことが起きて、いろんなことが終わった。
そしてこれもいろんなことが起きていく。
何が起きても私は変わらない。
メムナが傷つくことがあっても、私がその傷を癒す。
メムナが困っていれば、私が助ける。
メムナの周りが敵だらけでも、私だけは味方でいる。
ずっと、メムナを助け続ける。
そして、メムナと一緒に生きていく。
明日を一緒に生きていく。
魔力が足らない渇望少女の ゆのみのゆみ @noyumi
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