十の切望 

vowtista

序章 親友

【序章】親友


「早く、逃げて!」


「いやよっ!ラスル!まだなんとかなるかもしれないっ!」



 周囲は、レンガや焼けた木材が転がっている。

村だっただろう廃墟には、二人の女と二人の赤ん坊がいた。



ラスル「ミリアが・・・一番わかっているでしょ?もう私は持たないの。ゲホッ!・・・それに、あいつらもすぐにここに来るわ。だからっ!」


ミリア「いや、いやよ!いやああああ!!!」



 ラスルと呼ばれるその女性は、腹部と腕、そして口から血を噴き出していた。



ラスル「あなたがそんな調子じゃ、その子達はどうするの?」


ミリア「うぅ・・・でも・・・」


ラスル「ミリア、任せてごめんね・・・。それと、ずっと私の親友でいてくれて、ありがとねっ」


ミリア「何言ってるのよ!これからも親友よ!!!」


ラスル「最期くらい、笑顔が見たいわ」


ミリア「・・・・・・うぅ」


ラスル「ミリア、私と出会ってくれてありがとう」


ミリア「そんなの、こっちのセリフよ!ラスルのいない人生なんて、考えられなかったわよ!!!」


ラスル「ふふっ」


ミリア「本当に・・・ありがとねっ!」


ラスル「ええ・・・」



 そう言って、彼女は眠るように息を引き取った。



ミリア「・・・・・・」


ギリィ


 奥歯が擦れ合い、嫌な音が頭に響く。


ミリア「約束は・・・、果たすわ」





ミリア「ごめんねっ、ごめんね!」


赤ん坊「オギャァ!ギャッ」


ミリア「これは、あなたのためなのっ!だから、今だけは耐えてちょうだいっ!」


赤ん坊「ギャァ・・・」



武装兵「隊長、見つけました!」



ミリア「!?」


カチャッ


 銃口がこちら向く。



ミリア(この子達だけでもっ!お願い、もう一度だけ発動してっ!)


 大急ぎで、手の甲を合わせ、目の前の赤ん坊二人を覆う。



ダァン・・・



ミリア「あっ・・・」


喉元に穴が空く。

そのまま体は崩れ落ち、地面に這い蹲る。



ミリア(せめて、この子達だけは・・・!!!)





赤ん坊「・・・ギャ・・・ギャァ・・・・・・」



兵士「これは・・・」


 構えていた銃を肩にかけ、兵士は大声で近くの仲間に叫んだ。


兵士「救護班に伝達を送れ!

赤子を見殺すような趣味は、持ち合わせていないだろう!?」



 血に塗れた口から発される小さな産声は、この時、自らの命を繋いだ。




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