お酒(再)
「んふふー、カミラさん、すき」
「私も好きだよ」
「ふふー、イザベラさーん、おかわりくださーい!!」
夜ご飯を食べに来て、ちょっとだけ、と私が飲んでいたお酒を飲んだリアは見事に酔っ払った。
「アメリアちゃん、おかわりって、同じの?」
「はい! これ、おいしいですねぇ」
「……カミラ? 止めなくていいの?」
「止めたよ。でもさ、可愛く強請られたら断れないよね」
「……そ」
もうやめようか、とグラスを引き寄せれば、うるうるした目で見上げられて、もう少しだけとお願いされたら断れない。
「はい、同じの。強いから、気をつけてね」
「わーい! ありがとうございます! んー、おいしー!」
「リア待って……! そんな風に一気に飲んだら……あぁ……リア、それ飲んだら帰ろうか」
「えぇー、もうですか? カミラさん、もしかしてつまらないですか?」
「リアと居るだけで楽しいよ」
「えへへ、すき」
あぁ、私の番が可愛すぎる……
「カミラさん」
「ん?」
「カミラさーん」
「うん」
「きょうもきれーですね」
「ありがとう」
「みんなみてますけど、カミラさんはわたしのなんですからね!」
「もちろん。全部、リアのだよ」
「えへへー。すき。だいすき。ちゅー」
……何この可愛い子? キスなら何度だって大歓迎だけど、いいの? いつも外ではダメって言うのに?
そろそろお持ち帰りしてもいいかな? いいよね?
葛藤しているうちに、リアはカウンターに突っ伏して目を閉じていた。
「イザベラ、会計お願い」
「待ってねー。あれ、アメリアちゃん潰れちゃったか」
「そもそも飲み慣れてないからね。リアが自分で頼んだやつもそれなりだったし」
「なんかこの光景、懐かしいね」
「そうだね」
「てっきり襲っちゃったと思ってたから朝になって驚いたな」
「あれで襲ってたら、今はないよ」
「はは、間違いないね」
出会った頃から私を引き付けてやまない匂いは薄れることはなく、私を魅了する。お酒を飲むとさらに強くなるから堪らない。
お酒を飲むのは程々にしてもらおうと思いつつ、こんなに可愛い姿を見せてくれるなら定期的に飲ませようかな、とも思う。
「ご馳走様。またね」
「ありがとう。気をつけて」
気持ちよさそうに寝息を立てて、カウンターに突っ伏して寝ているリアを抱きあげれば、無意識に擦り寄ってきてくれた。何よりも愛しい番が自分を好きでいてくれるなんて、これ以上の幸せなんてない。
「ん……カミラさん? あれ、私寝ちゃってました?」
「うん。水持ってくるから、待ってて」
ベッドに寝かせた振動でリアが目を覚ました。竜人族に近づいた身体はしっかりアルコールを分解してくれているようで、意識もはっきりしていた。前は朝までぐっすりだったから、変化がよく分かる。
「カミラさん、お水はいいです」
「いいの? 気分は?」
「大丈夫ですから……触ってください」
「ほんと、かわいいね」
もう少し休ませてからにしようと思ってたけど、こんなに可愛く甘えられたらもう待てない。
組み敷けばそっと目を閉じたから唇を重ねれば、まだお酒が残っているからか熱かった。
*****
目が覚めれば、心配そうに私を見つめるカミラさんと目が合った。
イザベラさんの所にご飯を食べに行って、お酒を飲んだのは覚えてる。
カミラさんが飲んでいたお酒が気になって、1口貰ってみたら物凄く美味しかった。
カミラさんからは強いから他のお酒にした方がいいと助言をされたけれど、カミラさんが好きな物を私も飲みたかったからもっと飲みたいとお願いをした。
私のお願いに弱いカミラさんでも、出会った日に迷惑をかけているからダメって言うかな、と思っていたら苦笑しつつOKを出してくれた。
そして、途中から記憶が無い。
多分、結構最初の方から。そこまで弱くないと思っているから、カミラさん用の強いお酒を沢山飲んだことが原因だろうけれど、どうか何もやらかしていませんように……
見慣れた天井から、自宅に帰ってきていることは分かった。今は何時だろうか……
人族のままなら、きっと頭痛と吐き気で苦しんでいただろうけれど今はそんなことはなくて、能力の高い種族はお酒への耐性もあるのか、と驚いた。
ただ、お酒が残っているからか、身体が熱かった。
カミラさんに触れて欲しいのに、お水を取りに行く、と離れようとしたから引き止めれば、それはもう色気たっぷりに微笑まれた。何度見ても、麗しいです……
「リア、おはよ」
「おはようございます。何時ですか?」
「お昼ちょっと過ぎ」
「うう、寝すぎました」
寝たのはもう外が明るくなっていたから朝だったと思うけれど、もうお昼を過ぎて、半日終わってしまっている。
通りで、お腹がすいているわけだ。すぐに食べられるものって何かあったかな……?
「寝たのが朝だったし、そんなに寝てないよ」
「カミラさんは寝ましたか?」
「私は数日寝なくても何ともないからね」
本当に、カミラさんの体力ってどうなってるんだろうか?
ベッドから出てキッチンに行こうと起き上がれば、お腹が鳴った。
ちら、とカミラさんを見れば優しく微笑まれたけれど、なんだか恥ずかしい。
「ふふ、お腹空いたよね。ご飯作ったけど、食べられる?」
「食べたいです」
「可愛い。待っててね」
可愛い要素がどこにあったのか全く分からないけれど、軽くキスをして部屋を出ていったカミラさんを見送って、またベッドに倒れ込んだ。
睡眠時間が足りていないからか、目を閉じればまた眠れそう。
「リア、眠くなっちゃった?」
「ちょっとだけ。あの、色々すみません」
「ん? なにか謝ることなんてあった? 身体起こせる? はい、あーんして」
「……いただきます」
飲みすぎた私を気遣ってか、胃に優しいものばかりで、カミラさんの優しさが嬉しかった。
「美味しかったです。ご馳走様でした」
「良かった。今日はゆっくり過ごそうね」
「はい」
「ねえリア、今度飲む時は家にしない?」
「……私なんかしましたか?」
もちろんカミラさんに迷惑をかけたのは分かっているけれど、お店にまで迷惑をかけてしまったのか、と記憶を辿るけれど、残念ながら思い出せない。
「暴れたりとかはないから、安心して。好き、って沢山言ってくれるし甘えてくれるし、キスして、って強請ってくるし……可愛さが溢れすぎてるから家で沢山愛でたいな、って」
「……」
何それ? イザベラさんのお店で、キスを強請った……? お酒、控えようかな……
「また一緒に飲もうね」
「……今度は飲みすぎないようにします。絶対に」
「可愛いからいいのに」
カミラさんはどんな時でも可愛い、って言うからな……番ってきっとフィルターがかかってるんだと思う。
「お酒に酔って絡むとか、可愛い要素ないと思います」
「リアならどんな姿だって可愛いよ。どんなリアも、全部受け入れるから」
今日も、相変わらずの全肯定……
「相変わらず、私に甘いですよね」
「リアが私の全てだからね。愛しい番に甘いのは当然」
優しい口付けが降ってきて、またベッドに沈んだ。
今日はもう、1日カミラさんに甘えてしまおう。間違いなく、嬉しそうに笑ってくれるだろうから。
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