19.蜜月期間
ヒロイン(アメリア)視点
カミラさんの家に引越しをして、そのまま蜜月期間に入ったのだけれど、今日は3日目? 4日目? の朝かな? それとももうお昼? 気絶するように眠りに落ちているから、1日寝てた、とか言われても有り得そう。
ぼんやりしながら周りを見渡せば、いつも抱きしめてくれているカミラさんは居なくてちょっと寂しい。
起き上がって、服を着ようかな、と探してみても見当たらない。着たところできっとすぐに脱がされることになる気がするけれど。
番登録をしてから毎週泊まりに来てたし、今までと同じような感じで2週間過ごすのかな、なんて思っていた私の考えは甘かったらしい。
ほとんどベッドから出してもらえないし、移動する時は抱っこされて、ご飯もカミラさんが食べさせてくれる。
今までも甘かったけれど、カミラさんが激甘。
「リア、起きたんだね」
そんな激甘なカミラさんが寝室に入ってきて、慌てて布団を胸元まで引っ張りあげる。もう見られているけれど、やっぱり恥ずかしい。
そんな私を見てクスリと笑って、おそらくご飯が入っている器を置いてからキスしてくれる。
「……んっ、おはようございます……?」
「おはよ」
カミラさんとのキスは気持ちよくてうっとりする。
「身体は辛くない? 痛みは?」
「んゃぁ……っ、痛みはもう無いですけど、体力が……」
カミラさんが布団の隙間から下腹部を撫でてくるから変な声が出るし、まだ昨日の余韻で触れられるとゾクゾクする。
痛みは、って改めて聞かれると恥ずかしいな。蜜月期間に入って初めてされた時に痛すぎて泣いてしまって、その後もしばらく痛みがあったからカミラさんはずっと心配してくれている。
身体が辛いというよりも、体力がもたない。それに何より腰が痛い。
「痛みがもうないなら良かった。ごめんね、無理させてるね」
「そう思うなら加減してください」
「うーん、これでもかなり加減してるんだよね」
「ぇ……」
恐ろしいことに、これで加減してくれているらしい。竜人族の体力ってどうなってるの……
私が起きた時にはいつも起きてるけど、ちゃんと寝てる? 前に2、3日寝なくても余裕、とか言ってたけど。
「カミラさんいつ寝てるんですか?」
「リアが寝てる間」
……ですよね。
「ご飯持ってきたけど食べられそう?」
「食べます!!」
今日のご飯はなんだろう? 私が寝てる間に買ってきてくれているみたいで、毎食楽しみだったりする。
「ふふ、可愛い。今日はイザベラの所のご飯だよ。あーん」
「んー、美味しー!!」
やっぱり美味しい。思わず笑顔になる私を見て、カミラさんも幸せそうにしてくれる。この期間中、最後のひと口まで食べさせようとしてくるから、抵抗はとっくに諦めた。
「カミラさん、今日って何日目ですか?」
「ん? 3日目。どうしたの?」
1日寝てた、ってことは無かったみたいで安心したけれど、まだ3日目……もう結構お腹いっぱいな感じです……
「もうずっとベッドなので日付の感覚がなくて……洋服ください」
「うん。後でね。はい、あーん」
これ、絶対くれないやつ……
「カミラさんだけずるいです!」
「ん? 私も脱ごっか?」
「わー!! いいですっ!!」
「ふふ、遠慮しなくていいのに」
シャツに手をかけて脱ごうとするけど、そういう意味じゃない。笑ってるし、分かっててやってるよね? カミラさんの裸なんてまだ直視できないのに。
「リア、真っ赤」
「誰のせいですか……」
「魅力的に感じてくれてるって事でいいのかな?」
「もちろんです!!」
当たり前な事を聞かれすぎて食い気味に答えてしまった。カミラさんの裸だよ? 下着姿だけでも相当ドキドキしたのに。
「ありがとう。はい、最後のひと口」
「ご馳走様でした! 美味しかったです」
「ふふ、良かった。じゃ、私も頂こうかな」
あれ? そういう流れでした?
「わ、布団ーっ!!」
言い終わるが早いか、あっという間に布団を取られて組み敷かれる。また今日もベッドから出られないことが確定したみたいです……
「うーん、やっぱり足りなかったか」
蜜月期間最終日の夜、ベッドに腰かけてカミラさんが残念そうに呟いているけれど、足りないって何が??
「どうしました?」
「かなり私に馴染んできたかな、と思ったんだけどな」
カミラさんに馴染む……あれか。喉元を見れば、変わらず鱗が輝いている。
「鱗ですか? 自然に剥がれるんでしたっけ?」
「うん。ちょっとこの辺剥がれてきてるの分かる?」
よく見えるように近づいてくれたから触ってみれば、確かに端の方が浮いてる感じがする。カミラさんはこの2週間で完全に馴染ませたかったって事なのかな。
「分かります。通常どのくらいかかるんですか?」
「個人差があるけど、同族なら数日、他種族なら数週間って聞いてる。もちろん触れ合ってる長さとか相手の体力にもよるけどね」
同族なら数日? もしかして寝ずに、ってこと? 竜人族ってすごい。
「竜人族同士の場合も剥がれるんですか?」
お互い竜人族なら飲む必要ないもんね?
「うん。お互い交換したり、アクセサリーに加工したりかな? 同族の場合は飲んでも他種族みたいな変化は起こらないからね」
飲まないで持っておけるってことか。綺麗だもんね。
「アクセサリーにしたら絶対綺麗ですね!」
「……リアには飲んでもらいたいと思ってるけど、アクセサリーにして持っておきたい?」
「もし飲まないとしたら、先に居なくなっちゃいますけど、カミラさんは残りの時間って……」
100まで生きたとしても後80年くらいでしょ。カミラさんの平均寿命からして、1人になっちゃう時間が余裕で100年はあるわけで……
「リアを失ったら生きていけないかな。でも、リアが気にすることじゃないから」
すっきりした顔で何を……
「いやいや、気にしますって!」
「うーん、私の事は抜きにして、リアには選んで欲しいかな。もちろん、飲んでくれたら嬉しいけれど。竜化は出来ないけれど、限りなく竜人族に近づくから身体能力も上がるしね。人族はか弱いから心配で。剥がれても保管しておけばいいから、焦らなくていいよ。さ、ずっと無理させたし、今日はもう何もしないから寝よう」
言いたいことを言ってカミラさんは満足したのか、明かりを消して横に寝転んで抱きしめてくれる。こうして抱きしめられながら寝ることにすっかり慣れて、守られているようで安心する。安心しきっていると襲われたりするけれど……
結局2週間カミラさんに甘やかされて、自分で何もしていない気がする。カミラさんって恋人をダメにするタイプだと思うな……
甘えすぎないように私がしっかりしないとね。
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