16.可愛い番
番登録を終えて家に連れてきたけれど、純粋で素直で無防備なリアは無意識に煽ってくるから堪らない。
リアの胸元には番登録の証が揺れていて、視界に入る度に幸せな気持ちにさせてくれる。
「リア、戻っておいで?」
「カミラさんが落ち着くまで戻りません!」
あまりにもリアが可愛くてちょっと手を出してしまったら許容範囲を超えたらしく、私の元から逃げ出してしまって今は部屋の隅から警戒するようにこっちを見ている。小動物かな?
私の番は本当に可愛い。
「ごめんね、リアが可愛いから」
「まだ明るい時間なのにあんな……!!」
私にされたあれこれを思い出したのか、自分で言った言葉に赤面していて頬がゆるむのが分かる。可愛かったなぁ。
「夜ならいいの?」
「え?! 夜でもダメです!」
焦ったようにダメ、って言ってくるけど、どこまでなら許されるのかな、なんて考えてしまう。
ちゃんと待つ、とは言ったけれど少しずつ慣れてもらいたいし、触れる距離にリアがいて全く触れないでいられる自信は無い。
中途半端に手を出すと余計に辛くなる気もするけれど。今も辛いし。
「キスもダメ?」
「……ダメじゃないです」
「ふふ、可愛い」
少し悩んで、俯きがちにOKを出してくれるリアが愛しい。抱きしめたいけれど、リアから近づいてくれるのを待たないとまた逃げられそうだからな……
なんだか本当に小動物を相手にしている気分。
「そろそろ戻ってこない?」
「カミラさんの目つきがえっちなのでやです」
あれかな、欲求不満な感じが出てるのかな……そうなら本能的な部分だからどうしようもない。これでも抑えてるつもりなんだけど。それにしても言い方可愛すぎない?
「はー、可愛い。本当にリアは可愛いね」
「嫌って言われたのになんでそんな反応なんですか……」
本気で嫌がられたら立ち直れないけど、リアの反応はそうじゃないし。色々なリアが見られて嬉しい。
「どんなリアも可愛いなって」
「……そうですか」
なんかちょっと呆れたような視線に変わった気がする。
私が動く度にビクッとするリアが可愛くて、用もないのに部屋の中を移動してみたりしている。リアに知られたら怒られそう。
辛抱強く待ってみたけれど、リアが近づいてくることはなくて、どうしようかちょっと迷う。リアもどうしていいか分からなくなってる感じかな?
「リアちゃん。おいで?」
できるだけ優しい声で呼んでみたら恐る恐る近づいてくるから笑いそうになる。
「なんで笑うんですか?!」
「ふふ、ごめん、可愛くて」
耐えられなくて笑ってしまえばキッと睨まれるけれど、そんな顔もただただ可愛い。
「ごめんね。怒った?」
「怒ってないですけど」
どう見てもムスッとしてるのに怒ってないらしい。
素直だから全部顔に出てる。
「抱きしめてもいい?」
一人分空けて座ったからまだ警戒されてるかな、とじっと見つめて聞いてみれば目を逸らしながらも頷いてくれた。
「うわっ?!」
「リアはちっちゃいねぇ。可愛い」
抱き寄せて、さっきは断られた膝の上に座らせてみれば驚いたのかぎゅっとしがみついてくる。
「びっくりしたぁ……」
初めは緊張していたけれど、ゆっくり頭を撫でていれば力が抜けて、目を閉じて身体を預けてくれる。信頼されているみたいで嬉しい。
穏やかな時間が流れて、リアは私にもたれかかったままぐっすり眠っている。家に来る前からずっと緊張していたし、疲れちゃったのかな。子供みたいで可愛らしい。
「あれ、カミラさん……?」
「ん? あれ、私も寝ちゃったんだ」
「わ、もう外真っ暗! 重かったですよね? すみません……」
リアの寝顔を眺めていたら一緒に寝ちゃったみたいでもう外は暗くなっていた。人がいるところで熟睡することなんてないのに、リアの傍ではぐっすり眠れた事に驚く。
「全然重くなんかないよ。むしろ軽い。ちゃんと食べてる?」
「食べ過ぎ、ってくらい食べてます。最近お腹周りが太ってやばいです……」
リアは食べるの好きだもんね。
「さっき見たけどそんなこと無かったよ?」
「わ?! 言わなくていいです! そしてどこ触ってるんですか?!」
「お腹?」
だってリアが太ったって言うから気になるよね? 決して触りたかっただけではない。
「も、やめてください!」
「リア、真っ赤。こら、暴れると落ちるよ?」
逃げようとじたばたしているから落ちそうで危ない。リアは細いし怪我しちゃいそう。
「誰のせいですか……」
「え? 私??」
「カミラさんしかいないと思います」
呆れたように見られたけれど、リアが可愛いから仕方ない。
さて、今日の夜ご飯はどうしようかな。料理が出来ない訳じゃないけれど、味付けも適当だから上手くはない。大体イザベラの所か職場の食堂で食べるから自分で作ることなんて滅多にないし。
「リア、夜ご飯なにか食べたいものある? 私はいつも食べに出ちゃうんだけど」
「あんまり料理しないんですか?」
「出来なくはないけど、面倒だし美味しくないからやらない」
食べに出た方が絶対美味しいしね。
「良かったら、作りましょうか?」
リアが作ってくれるの??
「え、いいの?」
「はい。仕事で厨房に入ることもあるので一通り出来ます」
そっか。この前は接客だったけれど、飲食店勤めだもんね。
それは是非ともお願いしたい。食材買いに行かないとかな……
「それならお願いしてもいい? そんなに食材ないんだけど」
「見せて貰ってもいいですか?」
「何でも自由に見てもらって大丈夫」
リアに見られて困るものなんてないし。
「ありがとうございます。あの、離してくれないと見に行けないんですけど」
「うん」
「カミラさーん??」
せっかく抵抗なく膝の上に座ってくれているのに離したくないな、と思ってぎゅっと抱き締めれば困ったように見上げてくる。
「リアと離れたくない」
「え、すぐそこですよ?」
本当ならずっと離したくないけれどリアにしつこいと思われるのも嫌だから渋々離す。
「うわ、カミラさん不満そう……確認するだけですから、ちょっとだけ待っててくださいね」
なんだかリアの方がしっかりしている気がしてきた。
「……うん、これなら簡単なものなら作れそうです」
家にある食材や調味料を確認して、買わなくても作れるらしい。パッとメニューが浮かぶのがすごい。
「買い物に行かなくて平気?」
「大丈夫です。一応聞きますけど、すぐに作りますか?」
戻ってくるなり私の膝の上に戻されたリアが苦笑しながら聞いてくる。
「リアはお腹空いた?」
「まだそんなに」
「それならもう少しこのままでいて?」
「はい」
最初は隣にしか座ってくれなかったのにこの数時間ですごい進歩だよね。このままどんどん私に触れられることに慣れていってもらいたい。
「番登録をして、人族でいうところの新婚な訳だけれど。結婚休暇みたいなものってあるの?」
「新婚……」
新婚、という言葉に真っ赤になるリアが可愛らしい。まだリア側では届出をしていないもんね。人族は同性で届出が出来るのかも知らないけれど。
「私はリアに合わせるから」
「えっと、結婚休暇はあります。改装してから人も増えたので問題なく休めると思います」
「それなら良かった。そもそも人族って同性婚できるの?」
「本来は出来ないんですけど、番登録をしているのであれば認められるらしいです」
へー。それは知らなかった。番登録は性別も関係ないし、種族差もあって成人する年齢も違うから年齢の規定もない。
これだけ聞くと何でもあり、みたいに思うかもしれないけれど生涯で1度しか登録が出来ないから悪用されることもないしね。安易に登録をすると番が見つかった時に登録が出来ない、なんてことになるし。
「そうなんだ。明日送って行った時に届出に行く?」
「……はい」
もう番登録はしたのに、届出をする事を恥ずかしがるとか、可愛すぎませんか? 私の番が可愛すぎて辛い。
「ご飯の用意してきますねっ!」
じっと見つめすぎたのか、慌てたようにキッチンに行ってしまった。リアが落ち着いた頃に料理をする様子を覗きに行こうかな。
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