壁にめり込んだ男:4 要 求

「代金ですか?」

「前払いですよね。当然支払いはしたでしょ?」

「ええ、まぁ」

 わたしの鼻を、ざらついた匂い不安からくるストレスが刺激した。

「被害者の所持品は全て調べておきたいので、用意してもらえますか?」

「でも札ですから、どれが彼のかは」

「大丈夫です。とりあえず今ある分を出してもらえれば」

「え、全部ですか?」

「お願いします」

 主人の有無を言わせぬ態度に観念し、男はレジスタへと向かった。

―ッーーン。

 ドロワーの陽気な音が店内に響いた。

「その奥がランドリーですね?」

「え?!ええ。そうです」

 受付を覗き込んだデニさんが奥のドアを示す。

 聞きつつ彼が注視してるのは、現金を取る男の手元だった。

「こ、これで全部ですが…」

 ラウンジに数十枚の紙幣が並べられた。少額紙幣が中心でそれなりの量だ。

「ニール」

「わん」

 余裕だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る