やべー女が出来上がった

 親交のある貴族から管理を任されている狩猟場に忍び込み、鹿を三頭。狐を四頭。そして、狼を二頭、持ち出した弓矢で仕留めてしまったのだ。


 貴族の所有する土地は、そこに生えている草花一本まで領地者のもの。まさか、娘が勝手に殺してしまったとはバレるわけにはいかなかった。


 アナスタシヤの父母たちは早急に矢傷のある動物たちを制し問わず回収し処分するよう部下たちに命じると同時、昨夜の興奮を安らかな寝顔に讃える彼女をたたき起こした。


 問う。なぜ、そんなことをしたのかと。

 狩りに憧れていたので。

 そう答えてくれることを願った。どんなに思いを巡らせても、これ以上の返答は考えられなかった。


 そんなせめてもの両親の願いをアナスタシヤは打ち砕く。


「生き物を殺してみたかったので」


 父は閉口。母は泡を吹いて倒れた。


 アナスタシヤ・ロマノフ、一四歳の夏であった。

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