第09話 コレクター
ティータイムをした翌日。S級冒険者が2人やってきた。
「あ、猫のダフネ?さんとエルフさん!久しぶり~!!」
たまはピョンピョンと水色のワンピースをはためかせて、S級冒険者の肩にタッチする。もちろん、空間が別なので実際に触れているわけではない。
――ミュリーさん、今日来たのは新しい宝箱のことですか?
――何?それ?
――えっ?あ?!すいやせん!まだ、報告してませんでした!
かくかくしかじかとポーションと回復アイテムと思われる泥の話が伝えられる。
――よくわかりませんね。今日はメンケベルクの都に戻る用事もありませんし、回復魔法が使える私がいたほうがいいでしょ。現れたら教えてください
――おう、それより、そろそろだな
コアの上に宝箱が出現する。朝10時に出現するように設定しているのだ。
何も言わずに、ダフネがパカッと開く。
「じゃじゃーん!必殺!無職馬シリーズ!第2弾!念仏の馬よ!拳のこだわりがすごいの!見て見て!」
生臭坊主のいでたちにキリリとしている目が影を感じさせる馬の人形である。
――こいつはたしかに
ダフネが細かな点を確認していく。
――ええ。ここに書かれているマークが前回と同じで、前々回以前の布ゴーレムたちとは違うでしょ
(規定違反で文字を使うのはダメだったので、シリーズを分けるマークを作った。フウテンなら帽子のマーク、必殺なら刀のマーク。わたしの人形のコレクター!うれしい!)
――あたいは昨日からの布ゴーレムのがいいね
――だったら、こうしない?昨日より前のマークがある布ゴーレムは私の物。昨日からのマークがある布ゴーレムはダフネの物。マークの違いで順番にするのどう?
――うーん・・・わかった。それでいい!
そして、その日の午後3時。
宝箱の前にぎゅうぎゅうの10人。
――確かに、こいつは朝の宝箱とは違うな
「そうだよねー。縦長だからマジシャンの小道具みたいに見えるよね・・・」
――これから皆に私の最上級魔法をかけます。STR大上昇、DEX大上昇、VIT大上昇、INT大上昇、異常耐性大、魔法耐性大、物理耐性大、魅了耐性大、あと、魔法反射、物理反射、轟音反射、即死回避・・・
呪文の詠唱が10分続いた。
「長いわ!」
『本来のダンジョンでは、これが普通です』
ダフネとミュリーが目線を合わせてうなずきあい、ダフネが宝箱を開くと宝箱が消失し、テーブルとその上に紅茶の注がれたティーカップとケーキとフォークが10人分現れる。
「じゃじゃーん!ミルクティーとチョコレートケーキよ!・・・10等分だからちょっと小さいの!ごめんね!」
――・・・・あなたたち、昨日、これを食べたの・・・よね?
――は、はい。ただ、昨日はここまで、毒々しくはなかったので・・・
「ヒドイ!毒々しいいうな!!」
――シンリリと同じで私の鑑定にも回復アイテムと出るわ。
――あたいが食う。何かあったら頼むよ
――ええ。まかせて
カップをつかみ、ごくりと飲み込む。
――これはわかる。ミノタウロスの迷宮で出るポーションに近い。効果はそこまでじゃないが
「ミノタウロス?牛さんだからかな?」
ダフネがケーキをつかもうとすると
――まって!これ。この小さな三又の槍を使うんじゃないかしら?
――なるほど
ダフネは、フォークを握り、ケーキにぶっ刺し、食らいつく。
「わんぱくぅー!でも、きらいじゃないよ!」
――効果もないが異常もない・・・ないが・・・妖精のささやきがすごいなっ。皆も確認してくれ
さすがにS級の先輩が食べているのに自分が怖がるわけにはいかない。サキュバスの話を頭から追い出し、直ぐに食べたり飲んだりしはじめる。
「ふふふーん。わたしわかっちゃった。美味しいって言ってくれないけど、エルフたちの耳が小さくぴくぴくしてるし、ダフネの尻尾もゆらゆらしてるもん!」
――――― ――――― ―――――
○○「ベーリン帝国との間にダンジョンを配置して戦争に誘導しよっかなー。どうしよっかな・・・・ぐひひ」
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