第07話 護衛ゲットと魔物配置不可

 「へへへーん。ボディーガードゲット~」


 コアの両脇に2人の少女冒険者が槍を持って待機している。残りの6人は切り倒された木をダンジョンの入り口横に運んでいる。


 『何を喜んでいるかは知りませんが、ほぼほぼゲームオーバーです』


 「えー。なんでー?」


 『魔物と罠の配置は、生息する知性体に見られてはいけないと規定されています。つまり、冒険者りゃくだつしゃがいる間は何もできません』


 「コア。問題ないよ。斧一振りで広場ができるんだよ?魔物や罠を配置したって何の役にもたたないよ」


 斧を振っているジェスチャーをしているが、野球のバットを振ってるようにしかみえない。


 『・・・』


 「この子たち耳がちょっと長いね。ハーフエルフって種族かな?」


 『はい。ハーフエルフでC級冒険者です』


 「C級?」


 『首か手首に巻かれているタグの色で判別できます。銅色がC級冒険者です』


 「へー」


 木を積み上げていた少女冒険者が、ダンジョンに入ってくる。


 ――リンリリ隊長。発動準備が整いました


 ――ピョリー副隊長。発動を許可する


 ――はっ!


 たまは何が起こるのかな?と興味津々でダンジョンの入り口から眺める。


 コアを護衛する2人を除いた6人が積み重ねられた木の前に完全装備で立っている。


 ――最終チェック、魔法陣スクロールOK、対価木材OK、魔石OK、魔方陣に魔力供給!


 魔法陣を中心に緑色の光が輝き、パイプオルガンから流れるような音が響きだす。


 緑色の光は木材を光の粒子へと変換し、三角錐型の形状へと変化していく。


 最後にひときわ大きな光を放つと、そこには木でできた巻貝型の建物が建っていた。


 「すごい!建物できちゃった!へんな形へんな形!コア見て見て!」


 『ダンジョン外のことは視えませんが、広がった魔力波動で予測はつきます。ウッドクラフト魔術によるウッドハウスです』


 ――ファランクス防御陣形!!


 ――はい!!!


 「あれー?急に訓練?」


 『魔力波動を感知し襲ってくる魔物の接近に備えているのでしょう』


 森から飛行する毛むくじゃらの塊が次々と飛び出してくる。


 「毛むくじゃらの魚?!毛魚!!」


 毛魚の顔をよく見ると獰猛な猿のようだ。


 OOH!!AAAAH!!


 森や崖上から飛び出した毛魚が牙をむき出し次々に冒険者たちの盾にガシッ!!と衝突し、反撃で槍の串刺しにあっている。


 毛魚の突撃がそろそろ終わると思われたころ、森をバキバキバキッと引き裂き右腕の筋肉が異常に発達した巨人が現れ、木を引き抜いて叩きつけるように投げつける。


 ――ウィンドウォール!!


 数人の冒険者が魔法を叫ぶと、一陣の風がぶつかり、バンッとタイヤが破裂したような音が響き木を吹き飛ばす。


 ――ウィンドカッター!!


 AAH!!


 巨人は幾千もの風の刃に切り裂かれドロドロとした原油のような真っ黒な血を流すが咆哮を上げて突進する。こん棒代わりに引き抜いた木をファランクスの陣形へ叩きつけ、盾で受けた3人の冒険者を吹き飛ばす。


 ――チャージ・・・・スピアー!!!


 ズドォォォン!!!


 ファランクスの中央で力をためていた冒険者が、槍スキルの大技で巨人の腹に風穴を空けて弾き飛ばす。


 ――材料・・を奪われるな!手の空いたものは順次マジックバックに詰めていけ!


 「空中泳いでるーふしぎー」


 『たま様のいた地球には魔力が1種類しかありませんので、空に浮く生物を不思議に思うかもしれませんが、ゲルマーナワールドでは普通です。ちなみに襲ってきている毛魚はゴブリンです』


 !!!


 「ゴブリンの配置禁止!やー!あんなに気持ち悪いのやー!!!」


 (もし知らずに、イケメンの毛魚を配置していたら・・・きゃぁっむむむりー!)


 森の奥のあちこちで木々が揺れ、魔物が雄たけびを上げている。冒険者たちの戦闘はまだまだ続きそうだ。


 ――――― ――――― ――――― 


 ○○「十数年に1度しか設置できないSRのダンジョンマスターだからね!今度は慎重に選ぶよ・・・猟奇殺人。チョッパーフランケン・・・ないわ~、女子供狙ってる時点でないわ~」

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