第05話 初めての冒険者。それはS級冒険者パーティー

 「落ち着こ!こういう時は、おさない。かけない。しゃべらない。よ!」


 少女は両手を握りしめて力説する。


 『コアのわたくしに状態異常はありません』


 「コアも一緒に冒険者りゃくだつしゃ対策を考えるの!」


 『大岩・・・』


 「却下!シーツよシーツをかぶせて隠すのよ!」


 『シーツのような素材をそのままダンジョンに配置することはできません』


 「なんで?!?」


 どうも素材系アイテムはポイントの消費が少ない分変換基準に満たないと配置できないらしい。ちなみにハンバーグ定食はろくろと同じツールだから配置できない。それから12時間後。


 ダンジョンの前に5人の人影が現れた。


 ――ダンジョン?発見だな


 先頭を歩く皮鎧を着た茶髪の渋いおっさんが、頭をポリポリかきながら仲間に話かける。


 「しゃべった!ぼわっとした感じに聞こえるけど!しゃべったー!」


 ――都から2日、町から1日の距離にダンジョンができたのも驚きだが・・・罠か?ダンジョンコアが丸見えだ


 青みのある金属製の鎧を着た青髪のイケメンが答える。


 ――全員で入るのは危険だわ


 黒いローブをまとった紫色の髪の女が答える。


 ――私もフォローできるように先行班と一緒に入ります


 白いローブをまとった緑色の髪の美少女が答える。


 「ふぉぉぉぉっ?!エ、エルフー!!!」


 ――なら、護衛としてあたいも行くよ


 真っ赤な皮鎧を着た赤髪のプロレスラー体形の美女が巨大な斧を肩に担いで答える。


 「ふあああああぁぁっ!猫獣人!!!ふあああぁっ、ごびーごびーをにゃーにしてー!!」


 3人の冒険者、斥候、支援、補助のメンバーが顔を見合わせてゆっくりとダンジョンに侵入する。


 その瞬間!!!


 ウィィィン・・・・


 「コア。何か感じるー」


 たまが目の前・・・で3人を見上げるが、マスター空間は別次元のため冒険者たちは感知できない。


 『ダンジョン内に冒険者りゃくだつしゃが侵入すると冒険者りゃくだつしゃの階級によりダンジョンポイント(DP)が増加します』


 ――何っ・・・もないな・・・入っていいぞ。アベル


 おっさんがイケメンを呼ぶと、イケメンと黒ローブの女が入ってくる。


 ヴィィィン・・・・


 ――それにしても


 あきれ声で黒ローブの女が仲間に語りかける。


 ――ああ、これはない


 アベルと言われたイケメンが答える。


 「ふっふっふ。これぞ!わたしが考えたーーおーーーもーーーてーーー、おもてなし!」


 ダンジョンコアの上にミカン箱サイズの宝箱が乗っている。


 『・・・』


 「さぁ!さっさと宝を受けとって帰りなさい!」


 おっさんが宝箱を軽くこんこんと叩いたり匂いを嗅いだり、指を光らせて鍵穴を覗いたりしている。


 ――罠も鍵もないな。開けるぞ


 ――いや、俺が開けよう。ここまで来てS級冒険者のリーダーが何もしないのでは、流石に恥ずかしい


 たまは、コアの横で冒険者を見上げてたずねる。


 「ねぇ、コア。この人たち、イケメンの背中や肩に手をあてて何してるの?」


 『転送トラップ対策です。仲間の体に触れてばらばらに転送されないようにしています』


 ――いくぞ


 ばっ


 宝箱が開けられるとゆっくりと宝箱が消失し、中身があらわになる。


 「じゃじゃーん。昭和に流行ったフウテンのカバさんのお人形よ!」


 黄色いスーツに腹巻をしたアホずらカバの人形である。冒険者が来る前にたまが糸と布と綿とボタンとビーズでせっせと作った傑作である。素材ともオブジェクトとも認識されないように綿の分量に気をつかって4回も作り直している。


 「ふふーん。どぉ?かわいいでしょ!」


 ――・・・・


 ペシッ


 青筋を浮かべたアベルが、目にも見えない速度でフウテンのカバをはたきおとすと、スラッと剣を振りかぶる。


 「きやぁああああっ!!!」


 コアに向けられた殺気が、ダイレクトにたまへ流れ込む。


 ――アベル!やめろ!


 猫美女がアベルを羽交い絞めにする。


 ――落ち着けアベル!どうした状態異常か?!


 おっさんが剣を持つ腕を抑えて叱咤しったする。


 ――はぁはぁ・・・すまない。状態異常はない。どうやら、妖精のささやき・・・・・・・らしい。何故かあのアイテムにイラッとした


 ――簡便してくれよ。こんな時に


 ――そうね。私たちの依頼は調査だもの。こんなちんけなダンジョンでも、今は残っていてもらわなきゃ困るわ。他に現れた異物がなかったら、世界中の冒険者が何年も捜索し続けるところよ


 黒ローブの女が優しくさとす。


 ――すまない


 「こ、怖かったよー。・・・お人形一生懸命作ったのにな」


 たまは、はたきおとされた人形がどこに転がったんだろと探していると。


 ――何もないようなら、軽く捜索して帰りましょ。この時間なら暗くなる前に町につくわ


 エルフ少女が優しく抱きかかえていた。


 にひひ


 「大事にして、ね!」


 ――――― ――――― ――――― 


 ○○「ふー。危なかったー。ん?いや待てよ。確か条項に100日以内にダンジョンコアが破壊されたら再設置が可能だったはず!よーし!よしよし!」

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