第03話 何も配置できない

 「魔物以外、配置できないの?」


 『罠などもありますが、最安の落とし穴でも25,000ポイントです』


 「お高い!」


 (ゴブリンの2.5倍!!)


 「じゃぁ、洞窟を広くはできない?」


 『奥行を3メートル伸ばすのに、100,000ポイント必要です』


 「もっとお高い!」


 『オブジェクトの配置は可能です』


 「え!なになに!」


 『大岩3,000ポイント』


 「いらなーい!」


 (こんな狭い洞窟に岩なんて置いたら、わたしのスペースなくなっちゃうよ!)


 『では、魔素粘土で、自作してはいかがでしょうか?』


 「魔素粘土?・・・そうは言っても、お、お高いんでしょ?」


 どこかの通販芸人のように、手をスリスリして上目遣いをする少女。


 『1キロ、1ポイントです』


 「安い!買ったぁ!」


 たまの前に、1キロの粘土がぽよんと出現する。


 「こういう細かいこと、わたし好きなのよね」


 たまは、こねこねと粘土をこね、すこしづつ土器の形を作っていく。


 「ろくろとかほしぃ・・・」


 『ありますよ?』


 「えっ?でも、お高いんでしょ?」


 再度、手をスリスリして上目遣いをする少女。


 『ツール類の使用は0ポイントです』


 「なんでやねん!」


 『ダンジョンポイントはあくまでも、ゲルマーナワールドのダンジョンへ影響を与えるためのエネルギーを数値化したものです。たま様のいるマスター空間で何を配置してもポイントは消費しません』


 (つまり、生活環境は整うってこと?)


 「まくらとか出せるの?」


 『出せますが、ろくろが先ではありませんか?』


 「・・・。ろくろをお願い」


 たまの前に、電動ろくろがぽよんと出現する。


 「電気は?」


 『魔力で供給されますので、必要ありません』


 (魔力便利!)


 それから、凝り性のたまは、出現したろくろの上にぽすんと粘土を乗せて、かたかたとろくろを回して、没入する。


 2時間、3時間とたち。


 「できたー!」


 『配置します。どこがよろしいですか?』


 コアの1メートルくらい手前に、とてとてと歩いて行き。


 「ここにおねがい」


 『そのまま配置はできませんので、素焼きして配置します』


 しゅんとろくろの上の縄文風土器が消え、たまが指さした先に縄文風土器が配置される。


 「おー。いいねーいいねー」


 マスター空間ではまったりした色合いだったが素焼きされた影響もありダンジョン内ではシックな雰囲気がでた。カメラマンになったつもりで手をファインダーのようにして、えへへえへへと土器の周りを歩き回る。


 たま作を表すように、所々に付けられた団子サイズのたまがチャームポイントだ。


 10分後。


 さぁーっと淡い光の粒子になって土器が消滅する。


 「ほえっ?えー?!わ、わたしの土器ー!!」


 『素焼き粘土の配置は30分で消滅。ダンジョン空間から移動しても消滅します』


 「わたしの時間返せー!!会心のできだったのに~」


 うがー


 ――――― ――――― ――――― 


 ○○「ポンコツだよね!この子!ポンコツだよね!本当に平成生まれ?ダンジョンのセオリーわかってないよ!そもそも、土器作って何がしたいの!」

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