本-4
「結果は言わずもがな。というやつだ」
そう。今の話が本当なら、わたしが生きているこの世界はふたりが創った作品。
根拠も証拠もない。あるのはふたりの紡いだ言葉だけだ。
しかし、あの切り札を見ているわたしはそれを否定しきることができない。いやむしろ、びっくりするほどすんなりと、それが真実だと受け止めてしまっている。
もしかして――
そうなるように創られたから?
「…じゃあ、偽物は、世界とわたし?」
言葉にはしたくなかった。でも、確かめずにはいられなかった。
わたしが感じた違和感はの正体は――
わたし自身も違和感というだけだったから???
…。
「ねぇ、さっきわたしたちこそ本物って言ったでしょ?」
「勘違いしても仕方ないと思うが、あれにはお前も含まれてるぞ」
…え、わたしも?
「あなたはわたしたちが創った子じゃない。わたしたちの元に生まれてきてくれた子なの。多分あなた覚えてるんでしょう?わたしが初めてあなたに言った言葉も、この世界に産まれてくる前にどこにいたのかも」
…うん。覚えている。
水の流れが反響し合うような音と、暖かな闇に包まれたあの場所。そこから何かに呼ばれるかのように導かれた先にあった、眩しい光と冷たさに満ちた世界。不安も恐怖もなく、好奇心赴くままに周りを見渡すわたしを優しく抱きとめ、
「あと、補足をいれるが…」
と、父やんが口を開く。
「さっきの言い方だと、この世界とお前は
つまりは世界と一緒にわたしは創られた訳じゃない。そこはもはや疑う気はない。わたしは、ふたりの
「じゃあ、わたしが母やんの中にいた頃は…」
「ああ。いた場所が場所だけに分かる事はなかったろうが、お前は既に生まれてたんだ。かつての
わたしも、ふたりと同じ。
「しかし、バレた以上は、お前に謝らないといけないこともあるな」
父やんが畏まってわたしに向き合う。
「この世界は私たちが創り上げたもの。言うなれば虚構、偽物と表現されても仕方ない。それはお前が今まで送ってきた生活、接してきた人々にも当てはまる。この前、うちに遊びに来てくれていたあの仲のいい友人もそうだ。…すまない」
…そうか。全てが創られたものなら、おのずとそうなるのか。
「だが服装の流行りのように、お前と仲良くするよう調整をしたことは誓ってない。私たちはかれらとそれを形作るための、これまでにあったとされる歴史を創りはしたが、未来をどうするかは彼ら自身に任せるようにした。見苦しい言い訳かもしれないが、これだけは分かってほしい。お前自身にも、そしてお前が今まで生きてきた中で感じてきたもの、関わってきたもの全てにおいて、茶番は欠片一つとしてないんだ」
その告白に、わたしはどう答えていいのか分からなかった。
全てが
では、決め手はやはり――
信じるかどうか。
そこに尽きるのだろう。
…。
「わかった」
わたしはただ、理解を示した。
別に疑いが遺った訳じゃない。
ふたりに対して意地悪をしたかった訳じゃない。
ただ、あまりに物分かり良く信じるのは少し違うと、世界の真実を聞いた際にこの胸に宿ったちょっとしたモヤモヤを少しの間大切にしようと、そんなよく分からない結論に達したからだった。
それを察してくれたのか。父やんは『そうか』とだけ言った。
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