本-3

 アーゼンノア。

 そう呼ばれる人が出始めたのはいつだったかは正確には分からないの。でもそうね。世界のみんなが、あの大陸アンセス大陸に興味をそそられた同じくらいの頃にはいたみたい。どういう人をそう呼ぶかは、あまりはっきりしてはいないの。当人がその内何となく気づくみたいなものでしかなくて。ただ、共通する特徴もなくはないの。

 その一番は生まれた時の行動なの。赤ちゃんてほとんどがこの世界に産み出されることが怖くて不安で泣き出しちゃうものだけど、素質を持った子はまず泣かないみたい。それどころか、自分が産まれ出た世界を良く見ようと、周りをキョロキョロと見渡すみたいでね。聞けば、わたしたちも産まれた時そうだったみたいで、良く話題に上がってたわ。

 生まれながらの好奇心の塊。簡単に表現すればそういう存在なのよ。世界が黄昏時を迎えて、興味を抱く事自体が珍しくなってた頃だから、わたしたちはより一層不思議な存在として見られてたわね。もちろん、それが原因ではじかれるなんて仕打ちもなかったわ。そういう意識も廃れてたから。二人で、世界が終わるまでの記録を見た後に始めたのが、自分達の世界WonDerを創作することだったの。好奇心旺盛な二人組によるちょっとした遊びでしかなかったけど、それを続けていく内に、なぜかわたしたちは確信していたの。

 わたしたちは、世界を創れるっていうね。

 まるで、ある段階でそう思い立つことよう組み込まれていたかのように自然にね。アーゼンノアという呼び名も、いつの間にか頭の中にあったのよ。誰かにそう呼ばれたこともなく、そう名乗るようになってたから。そして、わたし達は導かれるように、世界の先端おわりへの旅を始めたの。わたしたちが生まれた頃、もう世界は1日の半分近くが夕暮れでね。世界の起点はじまりの方なんかもう終始星明かりもない真っ暗闇。大人の人たちからは、『いつしかここも、星のない夜に覆われて何もない闇の中に溶けて消える』って言われたわ。それがこの世界の終末の時だって。その人たちからすれば、まだ蒼い空がのこる方へ向かう事は、無駄で見苦しい悪あがきに見えたかもしれないわね。それでも構わず、わたしたちは目指したの。

 世界の先端おわりへ。

 わたしたちの世界WonDerを創りに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る