第36話 堕誘する花弁【ロドン・ルア】

 南大陸国アメリゴアの密林地帯に自生する植物の神獣だ。

 遭遇者によれば、巨岩の如き大きさの美しい薔薇ばらとされているが、その地点は皆異なり、植物という性質上、移動した可能性は低く、グル・イラ浮遊する憤懣同様に群を成しているのか?唯一無二の存在が枯死こし萌芽ほうがを繰り返しながら密林地帯を放浪しているのか?

 密林地帯全域に根を張っているという説もあり、それが立証された場合は、ピラ・デセオ欲深き柱を凌駕する規模を誇る生物と認定されることだろう。

 醸し出す香りも非常に魅惑的で、遭遇者の協力の元、その香りを模した香水が発売されたりもしている。その再現度を高めるために、神獣のサンプルを採取することに懸賞金を懸けている企業も多い。

 南大陸国アメリゴアの活性季である夏には、強い幻覚作用を持つ花粉を散布するが、それは花粉を摂取した者の錯視ではなく、花粉自体がある種の意思を持って形創る、質量ある幻と言われ、東大陸国ジペングニア空魚くうぎょと近い事象を捉えられている。

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