第5話 ふたりの世界のはなし

 世界樹はじまりの領域で目覚めたレヴの中には、世界樹が見る夢デイドリームと出会っただけでなく、しばらく同じ時間を過ごした人もいるらしい。

 その間、世界樹の夢少女と向き合う体験者レヴは、自分は“他の誰か‟-本来少女夢少女が好意を寄せている誰かになり代わっているような感覚があったとも話している。

 わたしは、世界樹の夢デイドリーム自体が見ている夢を構成する"ある記憶"が、夢で繋がった体験者レヴに流れ込むことで発生する一種の追体験ではないかと考え、その本来そこにいるべき“誰か”を"世界樹の心"と呼称した。追体験をした体験者レヴの証言で、世界樹の心に向けられる少女デイドリームの好意的な態度や情愛に満ちた表情などから推察して、とても大切な人であることが伺えたからだ。

 少女とのひとときを経験した体験者レヴはその性別を問わず、一様にその夢を幸福な時間と話した。文字通り“世界にふたりっきり”ふたりの世界を味わった充足感と、それが夢として消えゆく喪失感を抱えながら。

 ちなみに、再び世界樹はじめりの領域で目覚めたという体験者レヴは、一人もいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る