第六話

 次の日。


「おはよ、夜空さん……」と俺は席についた。


 そして、夜空さんは笑顔で「おはよぉ、優斗くん」と言った。


 その姿は、とても可愛らしかった……。

 初めて、無視されずに挨拶を返してもらったからかそれともその笑顔かわからないが、とても嬉しかった。


 なんだ、夜空さんってほんと可愛い……なぁ……。

 いかんいかん、俺には玲という好きな人がいるんだ……浮気なんてできない……。


 しかし、彼女から笑顔を奪った人のことを考えると心が痛い。

 彼女から楽しい中学校生活を奪った奴が憎らしかった。


 気づけば、俺はじっーと夜空さんを見ていた。


「な、なんですか? そんなにこっちばっかり見て……照れますよ……」と顔を赤くする夜空さん。

「い、いやぁ……やっぱり夜空さんは可愛いなぁっーと……やっぱり夜空さんには笑顔が似合うよ」

「そ、そうかなぁ……」と照れ、嬉しそうにする夜空さん。

 

 その姿は演技ではなく天然でやってるとしたら、ほんとに可愛いの詰まった人だと思う。

 いや、その姿は演技ではない……つまり、可愛いが詰まった人だ……。


「もっと自信持ちなよ……」

「う、うん……」と笑顔で言う夜空さん。


 よかった、夜空さんの失った時間を高校生で取り返すことが出来そうだ。

 よし、後は翔悟のところへ行って謝るとしよう……。


 俺は翔悟の席へ行き、「きゃぁ〜」と盛り上がっている中。


「翔悟、ちょっといいか?」と声をかけて、場所を変えた。

 

「良いところだったのにぃ……」などと、周りが盛り上がっていたところを邪魔してしまったという少し罪悪感がある一方で、ハーレムを阻止したという達成感があった。


「それで? なんだよ? あんなに女の子がいる中声かけてよ?」

「いや、その、すまん……」


 こいつ、俺より女の方が優先度たけーのかよ……。

 まぁ、それもそっか……俺なんかよりぁあーやって異性といた方が楽しいもんな……。


 俺は頭をかきながら「夜空さんのことでさ……」


 そう言った瞬間、翔悟の目は輝き、俺の手を握る。


「どうしたんだ? もしかして、友達に!?」

「ううん、そうなんだけどさ……」


 伝えるんだ、やっぱりあの話は無しにしようと。


「それでそれで? 俺のことを紹介してくれるんだよな?」


 親友には悪いが、こればかりはな……。


 俺は拳を握り、勇気を振り絞って。


「やっぱ、無しにしようぜ……」と言った。

「は?」と翔悟は言った後に少しの沈黙が続いた。


 それもそうだろう、ずっーと期待してたことが裏切られたんだ。

 でも、俺はもう決めたんだ。

 翔悟の為でも夜空さんの為でもない。

 自分の為に夜空さんの手伝いをすると。


「だからさ、ごめん……」と俺は頭を下げると。

「嘘だろ? お前、ヒヤヒヤさせんなよ……」

「いや、本当なんた……」

「おい、それはどういうことだ? 俺はさお前の為に玲とことをして、玲がお前のこと好きだってところまで探ったしさ。お前が玲のこと気にしてるってことも教えて、さらにお前のことを意識させてあげたのによ? 何言ってんだよ?」


 翔悟のその目は本気だった。

 今までに見たことのない俺の知らない翔悟だった。


 その目を見た瞬間、俺の身体は緊張でカチコチに固まった。


 翔悟は俺の為にそんなことをしてくれていたのか……。


 そう思うと翔悟への罪悪感で心が染まった。

 

 そうだよな、俺は何様のつもりでいたんだよ……。


「ごめんよ、俺が間違ってたよ……」


 そうだよ、たとえ自分の為であってもそれを理由に親友との約束を破るなんて……。


「俺、一応。夜空さんとはそれなりに仲良くなったと思う。だから、紹介するよ……」

「そうか、ありがとよ!! 親友!!」と翔悟はグッドポーズをした。

「お前こそありがとよ、俺の為に玲に色々してくれてよ……」

「別に良いよ、でもあるからさ」と翔悟はニヤリとした。


 するとそこに、「見つけたぁ〜優斗〜」と俺に飛びついて来た玲。

 

「うわっ、なんだよ?」


 なんでここが分かったんだ?


「えへへへ……」と俺に胸をくっつける玲。


 なんと柔らかい感触……これは、ノーブラじゃぁ……。


「玲さん? 変なこと聞くけど、ブラは……」

「ここにあるぅ〜!」と玲は黒いブラを出した。

「うわっ、付けろ付けろ」と俺は顔を隠す。


 その姿を見てニヤリとする翔悟。

 翔悟は平然と玲の黒いブラを見ていた。


 それもそっか、あいつはモテてるもんなこんなんじゃ反応はしねーよな……。

 って、ことは俺は……。

 

「ぇえ〜、優斗の為だったのに……」と残念そうに黒いブラをワイシャツを脱ぎ付け始める玲。

「なっ」と俺はそっぽを向く。


 なんなんだ、玲はこんな奴だったか……こんな自分から身体を晒す奴じゃ……。


「よし、着れたぁ〜優斗〜」と抱きつく玲。


 まぁ、いいや。

 最高です……。


「じゃぁ、戻るか……」



 その日の放課後、翔悟と玲はベッドで熱くキスをしま。


(玲がお前のことを思っているほど、敏感になって気持ちいんだよ……感謝するよ……くん)

 

 

 

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