第三話(第三者視点)

 玲の部屋のベッドにて。


 玲と翔悟は熱くキスをして、同じベッドに横になった。


「なぁ、玲?」

「ん? どうしたの?」

「優斗がお前のこと好きだってよ……」と少し笑いながら翔悟は言う。

「ほんと!? でも、今は言わないでよ……少し、申し訳なくなるじゃん!!」ぷんぷんとしながら言う玲。


(やった。優斗も私のこと好きなんだ……ふふ、嬉しい……でも、いいのかな? このままで私……)


 両思いと翔悟との行為の気持ちよさで複雑な気分になる玲。


「ほんとぉ?」

「本当だよ、本当。だからよ、早く付き合っちゃえ!!」


(俺たちの関係はこれで終わりか……。いや、まぁ優斗と付き合ってもしてくれるよな?)


「でも……でも」

「ん?」

「優斗と付き合っても、翔悟とはその……したいなぁ……」


(この快楽を覚えてしまったら、なしでは生きていけそうにない……)


「俺もだよ」


(やっぱり、俺は人生を謳歌してるなぁ……こんな美少女とはできるし……あとは夜空あいつを落とせば最高の高校生活だ……俺の周りには女も近づくしよ……)


「だからさ、もっと優斗に積極的になった方がいいよ」

「そうなの?」

「ああ、そうだ」



 次の日。


(っつっても、どうすれば良いんだよ? 夜空さんに喋りかけても……)


 優斗はカバンを机の横にかけて夜空に挨拶をした。


「おはよ、夜空さん……」

「………」


 しかし、無視をする夜空。


(無視だしよ!! ……)


(男ってやっぱりこうなのかな……。共学にしなければよかった……男を克服するつもりで共学にしたのに、この人私に話しかけてくるし、玲さん? っていう美少女の彼女がいながら……やっぱり、男は大嫌いだ)


 優斗は諦めずにもう一度「おはよう、夜空さん」と言う。


 しかし、先ほどと同じで夜空は無視をして本を読む。


(別に私じゃないとダメなのかな? 私が挨拶を返さないといけない理由でもあるのかな? でも、やっぱり……男は私目当てだよね……)


 しかし、挨拶が返ってくることはなかった。


 優斗は机に顔をつけて、空の景色を堪能した。


(ぁあー、どうしよう……翔悟が玲と付き合うのを手伝ってくれるって言ったのに、俺はできませんでした? いやいや、親友として失礼だよな……どうしよ?)


「あのさ、なんで無視するんだ?」

「……」


 しかし、返ってくるのは無視……。


(なんでそんなに話しかけるの? やっぱり、私に男の克服は無理だ……)


「見てる限り、男にだけたよな? そんなに冷たいの……」

「……」

「はぁ………」


(無視か……これはキツイな……。どうやったら、喋ってくれるようになるんだろう)


(はぁ、私に喋りかけないでもらいたいなぁ……所詮男はそうやって私を道具にしか見ていないのだなら……)


「なぁ、そんなに男に冷たくしてると結婚できないぞ?」と少し心配気味に言う優斗。


(元々はそういうことで、男を嫌い……大嫌いになったのだ)


 すると、そこにボタンをひとつ外し黒いブラがチラリと見える格好の玲が、優斗に飛びついた。


「うわっ!!」と驚く優斗。


 そして、チラッチラッと優斗は周りを見た。


 しかし、案の定。

 すでに、男子たちは優斗を睨んでいた。


(ほら、付き合ってるじゃん……)


「どうしたんだよ? いきなりよ……いってて……」


 優斗は玲を見るが、すぐに目を逸らした。


(た、谷間が……黒ブラが……)


 顔を赤くする優斗。


「お前なぁ、ボタン……」

「え? 空いてた方が優斗が……」


 次の瞬間、玲は口を手で塞ぐ。


「うんうん、なんでもない……」

「そうか? 別に、俺はそういうのには興味はない。俺はただ、素の玲が好きなだけ…………っーーじゃなくて、良いと思う……」


(あ、あぶねー)


「そ、そう!?」と玲は少しシュンとしながらボタンを閉めた。

「そうだよ。なんだ? 翔悟に教わったのか?」

「いや、別に……」

「やっぱりそうか……」


(あいつ、何してくれてんだよ!! って、夜空さんは…………いない……)


 気づけば、夜空は席を外していた。


(の、逃した……)



 夜空はトイレに駆け込んで。


「うえええ……」とトイレで吐いた。


(男と喋った……しかも、男女が目の前で喋っている現場も……)


 そう思うとトラウマが蘇り、さらに吐き気が増した。

 時の出来事が頭の中をよぎる。

 あの時の女子の言葉、男子の言葉。

 全てが、夜空の頭の中で蘇った。


「うぇえ……」と苦しそうに吐く夜空。


 夜空の吐く音は誰もいないトイレの中に響き渡った。



 翔悟は女子たちが集まり「翔悟〜」「聞いてよ〜」などと女子が盛り上がっているのを無視して、退屈そうに膝を机につけて手で頭を抑えながら優斗と玲を見て。


(ふん、流石童貞だ……あれだけで、あんな反応するなんてな……。まぁ、優斗? こんなに俺は頑張ってるんだぞ? お前に期待してるよ……)


 そして、ニヤリと翔悟は笑ったーー。


 

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