第九話
次の日、私は初めて優斗と一緒に登校をした。
「おはよ!! 優斗!」と時計台付近のベンチに座った優斗に言う。
「ああ、おはよぉ! 夜空……じゃぁ、行こっか!!」
私と優斗は手を繋ぎ、学校に向かって歩き始めた。
いつも通る道が新鮮に感じた。
例えば、花屋さんだ。
いつも私が登校する時間帯に店員さんが水やりをしている。
その花はいつもなら、別になんとも感じなかった。
でも、今日はとても美しいと感じた。
「ねぇ、優斗……」
「ん? どうしたんだ?」
「私ね、今日優斗の家に行っていいかな?」
「ごめんよ、今日は妹がいるんだ……」と申し訳なさそうに言う優斗。
「そ、そっか……」
「ほんとにごめんよ、まだ玲と別れたことを家族にも誰にも言ってないからさ……夜空と付き合ってることなんて言えないんだ……」
「だ、だよね? いいよ、別に……でも、近いうちに言ってよね?」
「ぁあー、少し言うのに勇気が必要だけど頑張ってみる!」
それもそっか。
玲さんとは10年も付き合っているらしい。
そのため、「別れた」なんて言ったら心配されるに決まっている……。
しばらくは、無理っぽいなぁ……。
でも、こうして一緒に登校できるだけ幸せだ。
『ぁあー、玲さんが消えてくれればな……』
○
学校の近くに着くと私たちは別々に学校へ行くことにした。
なぜなら、一緒に行っていることがバレない様にするためだ。
「じゃぁ、先に行くね……」と私は歩き始めた。
早く、玲さんとのことを周りに教えれば……早く、翔吾のことを周りに教えれば……私はもっともっと、幸せになれるのに……。
そうすれば、優斗は周りなんか気にしない。
そうすれば、優斗は私だけを見てくれる。
早く、言えばいいのに……。
でも、優斗には心配どうこう言う前にそもそも、そんなことを周りに伝えようとしていない。
優斗自身も「もう、復讐とかどうでもいい」と言っていた。
なら、どうすれば復讐をしたくなるかな……。
「そうだ、"私が復讐へ導けばいいんだ"……」と私はボソッと言う。
そうすれば、優斗は周りを気にしないで私だけを見てくれる。
そうすれば、私はもっと幸せになれる……。
でも、どうやって?
どうやれば、周りは気づく?
周りは気づくし復讐できる効率のいい方法は……。
あ、なら、やっぱり……社会的死とまではいかないけど
そんなことを思いながら、私はウキウキと歩き出した。
そんな私は悪い子だ。
○
学校に着くとすでに玲さんがいた。
玲さんはこちらを見ているが、私は無視して席についた。
改めて、玲さんと翔吾を見ると背筋がゾッとするほど怖くなった。
いつも、一緒にいる相手に裏切られる。
その気持ちは私にもわかる。
なぜなら、私も以前に元カレから裏切られているからだ。
そんな中、優斗は1人寂しくそれでも、一緒にいたんだ。
やっぱり、優斗はすごいなぁ……。
すると、優斗が来た。
「お、どうしたんだ優斗? 玲と今日は登校してないって?」と優斗に近づく翔吾。
どうやら、この雰囲気から周りも翔吾にもまだ玲さんと別れたことが知られていないらしい。
きっと、玲さんがまだ言っていないということだろう。
優斗は一度、口を開けた後に「ぁあ、そ、そうかぁ?」と苦笑いをしながら言う。
「なんだ? 喧嘩かぁ?」と優斗の肩に手を置きながら言う翔吾。
前まではただの仲のいい2人組と思っていたその光景は、今ではクズとクズに耐える彼氏となっていた。
「違うって……」
「ほんとかぁ〜? なぁ、玲そうなのか?」
玲は両指を顔の前でくっつけて「ええ、だって私たち付き合ってるもんね♪ 優斗♪」と言った。
どうやら、優斗を諦めていないらしい。
私の優斗に、あんなことをしておいて……。
まぁ、いい。
その方が、復讐のしがいがあるもの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます