第十話

 放課後。


「ねぇ、玲さん。ちょっといい?」と私は玲さんに声をかけた。

「うん♪ 私も話したかったの♪」とどこか奇妙にしゃべる玲さん。


 彼女の雰囲気は今までとはまるで別人だった。

 今までの明るい雰囲気は無くなっていた。

 それもそっか……だって、私があなたの優斗を手に入れたもの……。

 それも全部、自分が悪い。

 なのに、なんでそんなにニコニコしてるの?

 ねぇ、早く私に絶望した顔を見せてよ。


「じゃぁ、西棟4階の空き教室に行こ」と私は笑顔で言う。

「うん♪」


 西棟4階の空き教室は放課後に人が全くいないためだ。


 私と玲さんは西棟4階の空き教室に向かった。

 ちなみに、優斗は先に1人で帰ったようだ。


 私と玲さんは西棟4階の空き教室に着くまでは、一言も喋ることはなかった。


「ほんとに、ここって人いないんだね♪」

「ほんとね」


 ガラガラとドアを開けて、私と玲さんは空き教室の中に入る。


 私は西棟4階の空き教室のドアを閉めて、私と玲さんは机の上に座った。

 玲さんは机の上で足をぶらぶらしながら、鼻歌を歌っている。

 結構壊れているようだ。

 でも……優斗のためにも……自分のためにも、玲さんにはもっと壊れてもらわないとね♪。


「ねぇ、玲さん?」

「なに♪?」


 ひとつ間を空けてから私は。


「実はね私。優斗の初めて貰ったの」と私は両指を顔の前でくっつけて言う。


 その言葉を放った瞬間、玲さんの目からは涙が流れた。

 玲さんは涙を拭かずにそのまま、机から立ち上がり地面に膝をつけた。

 

 あれ? 反応が薄いなぁ〜。

 もっと、絶望してくれると思ったのに。

 そうだ、もっと言えばいいんだ♪。


 私は机から立ち上がり、玲さんのほっぺを触り。


「他にもね、一緒にお風呂に入ったの」


 その言葉を放った瞬間、玲さんの目はまるで希望をなくした人のようになった。


 効いてる、効いてる……。

 私が見たかったのはその目だよ……。


 なんだろうか、このウズウズする気持ちいい気持ちは……。

 

「嘘だよね……」と玲さんからは涙が一滴、床に垂れた。


 そのまま、玲さんは下を向く。


 そうそう、それだよ。

 それそれ。


「えんうん、他にもね……」と私は玲さんの死んだ顔を上げるために、ほっぺを両手で掴み私が見えるように上げた。


「今日も一緒に登校したし……LINEも毎日してるの。他にもね……あ、そうだ……今度、優斗の家に行くの。楽しみだなぁ……」


 次の瞬間。


「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」と叫ぶ玲さん。


 玲さんは下を向こうとするが、私はほっぺをしっかり両手で掴み固定した。


「あ"あ"あ"………なんで、なんでよ……」と涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃな玲さん。

「そんな、顔だと綺麗な顔が汚れちゃうよ♪」と私はポッケからハンカチを出して、玲さんの涙と鼻水を拭いた。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ……なんで、なんでよ……私を優斗は選んでくれないの……」

「それはね……」


 そうそう、もっと壊れちゃえ♪。


「優斗はが大好きだから。愛してるから」


 そう言うと、私は玲さんのほっぺから手を離した。

 

 すると、玲さんは力を使い果たしたように床に丸まった。


「優斗……優斗……優斗ぉ……」と玲さんは何度も顔を床に叩きつける。


 完全に壊れちゃった♪。


 クスッと私は笑った後に。


「玲さん」と言うと、頭を床に叩きつけるのをやめてこちらを見る。

「そんな、叩くと綺麗な顔がキズだらけになっちゃうよ……それでね、玲さん……」


 私は丸まっている玲さんを両手で背後から覆い。

 耳元で「でもね、優斗。まだ、玲さんのこと好きだよ……ここからは、女の子同士のバトルね♪。だからね、まだ優斗にアプローチすればワンチャン♪ 狙えるかもね♪ だから……」

「ほんと♪?」

「うん。ほんと♪」


 すると、玲さんは私の両手を払い立ち上がり。


 玲さんはニヤッとした後に「優斗、優斗……大好きな優斗♪」と言いながら西棟4階の空き教室から出て行った。


 ふふ、完全に壊れちゃったなぁ……。

 『可哀想な玲ちゃん♪』。

 これからどうなるかな? 

 期待してるね♪。

 ……これでが消える……。

 

 

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