第八話

 優斗の家に着いた。

 どうやら、両親は仕事でいなく妹は部活らしい。


 玄関に入ると、優斗は「先にお風呂入って来ていいよ。俺、あとで入るからさ」と気を遣ってくれた。


「でも……服が……」


 私は今来ている服しかないため、お風呂に入ったところで服を着てまた濡れてしまう。


「それなら、中学の頃のジャージ貸してあげるよ。今度、返してくれればいいよ」と優斗は優しく言う。


 私は笑顔で「うん」と言ってお風呂場に行った。


 何故か、心臓がドクンドクンと鳴るばかりだ。

 この気持ちは……中学のあの時以来だ……。

 そして、水族館でのキスした時のあの感触が蘇る。

 『私の優斗……大好きな優斗……』


 私はシャワーを浴びながら、気づけば下腹部に手がいっていた。


 ほんと、優斗は優しいなぁ……。


 シャワーを止めてお風呂に入り、少し期待した優斗とすることを。


 私はお風呂に口まで浸かる。


 なに考えてんのよ……私。

 わたしのバカぁ……。


 私はお風呂の中でぶくぶくと口から息を吐いた。


 お風呂から出て、少し湿っている下着を穿いて優斗のジャージを着た。


 とてもいい匂いだった。

 とても心臓がドキドキした。

 ほんとに、『私の優斗になったんだ』。


 鏡にはニヤッと笑っている自分が写っていた。


 私は、ドライヤーで髪を乾かして優斗がいるリビングへ行く。


「優斗、お風呂空いたよ……」

「お、そうか……」


 その後に、優斗は私を見てクスっと笑う。


「えっ?」と戸惑う私。


 私、今なにか変なことでもしたのかな?


「いや、ジャージ姿も可愛いなってさ……」


 その言葉を聞いた瞬間に、またドキドキと心臓の鼓動が速くなる。

 そして、したいという欲が抑えられないほどに湧いてきた。


 だめ……私……。


 しかし、その気持ちは抑えられずに私は気付けば優斗の前にいた。

 そのまま、気づけば柔らかいマシュマロ……キスをしていた。

 その時に思った、優斗の水族館の気持ち。

 そして、私はとんだ変態だなぁと。


 優斗とキスすると、心が落ち着く。

 

「なっ、夜空……」


 そのまま、私と優斗はソファーに倒れて熱くキスをした。



「また、お風呂入らなきゃだな……」

「ふへへ」

「一緒に入るか?」

「うん!」と私は笑顔で言った。



 お風呂から出ると。


「コーヒー飲む?」と優斗が質問してきたため、私は「うん」と言った。


 気づけば、優斗の家に来てから1時間が経過していた。

 空は晴れていてもう、雨が止んでいた。


 ずっと、止まないで欲しかったなぁ……。

 そうすれば、ずっと優斗といられるのに……。


「はいよ」と優斗はコーヒの入ったマグカップを私に渡す。

「ありがと」と私はそのマグカップを受け取った。


 優斗はほんとに優しいよ……。

 そんな優斗と付き合えた私はとても幸せ者だ。

 優斗のおかげで、私は学校に行くのが楽しくなった。

 優斗のおかげで、生きる希望を持てた。

 全てを失いかけた私を救ってくれたのは君だよ……。


 コーヒーの温かさと優斗の暖かさで心がポカポカと温まる。


 私はマグカップを置いて「ありがとね……優斗……」と言う。

「ん? どうしたんだ?」

「優斗のおかげで、学校に行くのが楽しくなった。これからの人生も、優斗のおかげで楽しくなりそうだよ」と私は笑顔で元気よく言った。

「それは、こっちのセリフだよ……」

「え?」


 優斗もマグカップをテーブルに置いた。


「夜空のおかげでさ、誰かを犠牲にすることは自分の幸せにはならないってことがわかったんだ。ほんとに、ありがとう」


 ぁあー、やっぱり、私たちは似たもの同士なんだね。

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