第十二話(第三者視点)

「ねぇ、優斗。私のことまだ好き?」と玲は2年前の誕生日に優斗から貰った刺繍ししゅう入りのボールペンに話しかける。


(優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗、優斗)


「やっぱり、好きだよね……」


 玲はボールペンを舌で舐める。


(優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き、優斗好き)


「なんで、夜空さんのことが好きなの……それじゃぁ浮気じゃん……」と玲は悔しそうな顔をした。


(優斗、優斗、優斗、私だけの優斗……大好きな優斗……)



「来たぞぉ〜〜」と翔吾が玲の部屋の扉を開けた。


 そこには涙を流している玲がーー。


「翔吾、遅いよ……」

「ごめん、ごめん!」

「そんなことより、翔吾は最近の優斗と夜空さんの関係に何か思わないのぉ〜?」

「ん? あー、あれは、俺が夜空といい関係になるためにやってるんだろ?」と翔吾は現実逃避をしてるかの様に言う。


 そのまま、二人はベットで。


「積極的だな……」

「ははは」と玲は奇妙な笑いをした。


(優斗、優斗、私の優斗……)


 玲の目から涙が一滴、シーツに垂れた。


(頭の中が真っ白だ……気持ちい……優斗としたい。たくさんして、たくさん子供が欲しいなぁ)


 玲はそんなことを思い続けた。


(ねぇ、優斗、優斗は翔吾のやつより大きいのかな……? ねぇ、優斗、優斗は私か夜空さん、どっちとしたい? ねぇ、優斗……)

 

「おい、ちょっと……」


 玲は無表情だった。


「ちょ、たんまだって…………」


 しかし、玲はその言葉を聞かない。


「ばか、溢れるだろ……」

「いいの〜」


(だんだんと、優斗のことではなく……気持ちいという感情が頭の中に溢れて来た。脳が溶けそうなほど気持ちがいい。やっぱり、翔吾のやつは気持ちいい)


「優斗……優斗……」と玲の目からは涙が大量に垂れながら呟いた。

「な、優斗って……まぁ、そうだよな……俺より優斗としたいよな……」


(俺も夜空としたいなぁ……。優斗は俺のためにしてるんだよな?) 


「ううんとしたい」と玲はニコっと翔吾に抱きつく。


(気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい、気持ちい。ねぇ、優斗……私としたら、優斗も気持ちいかな? 私は気持ちいよ)

 


 2人は汗だくで呼吸を整えている。


 すると、翔吾のスマホに『今から、お前ら、俺の家に来れる?』と一件のLINEの通知がーー。

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