第十一話

「おはよぉ、夜空!」と俺は夜空に挨拶をした後に席についた。


 俺が玲と別れたことーーそして、夜空と付き合ったことはまだ誰にも言ってはいない。

 両親にもだ。

 昨日、両親に言おうとしたがなかなか、10年間も付き合ってた彼女と別れたなんて言いにくく、言えなかった。

 まぁ、周りは察してくれるだろう。

 しかし、翔吾はどうだろうか?

 きっと、俺に殴りかかるほど悔しくて泣くだろう。

 しかし、俺が味わったものはそんな甘いものじゃなかった。

 夜空も「良い」と言っているし、どうせならもっと準備をした後に自分の口から翔吾に言うことにしよう。

 でも……もしかしたら、もう玲が言っているかもしれない。

 

「おはよ、優斗!」と夜空は笑顔で言う。


 席についていつものように、ペンギンやら授業内容やら話していつもの日常を過ごした。

 変わったことは、玲と喋らなくなったことだ。

 翔吾からは、「喧嘩かぁ〜?」と言われたため「そう」と答えておいた。


 どうやら、まだ玲は翔吾に言ってないらしい。

 てっきり、むしゃくしゃしてヤって、その時に言うと思ったがそうではないらしい。


 しかし、昼休みのことだったーー。


 少し、席に座り人が少なくなったところで。


『夜空、屋上でご飯食べよ』と俺は夜空にLINEをする。


 屋上は入学当初は、人気だったモノの今は人がいないため、誰にもバレずに夜空とご飯を食べることができる。

 隣に居るのにLINEをするというものは、新鮮な感覚だった。


 すると、そこにーー。


「優斗〜〜♪」と後ろから誰かが抱きついて来た。


 だ、誰だ……。

 聞き覚えのある声だった。

 いつも聞いていた声だった。

 もしかして……いや、それ以外に考えられない。

 

 俺は恐る恐る、後ろを振り向くと。


 やはり、玲だった。


 俺に何の用があるんだ?

 別れたのに……もう、喋りかけんじゃねェーよ。


 次の瞬間、俺のほっぺを両手で固定して柔らかいものが口に当たった。

 唇だ。


 頭の中がボーッとした。

 とても、気持ちがいい。

 そういえば、俺と玲はキス自体したことなかったな。


 俺は急いで、玲の両方を押してなんとかキスから逃れた。


「はぁはぁ……そうやって、翔吾にもやってたのか……?」

「うん、そうだよ♪ でも、翔吾とはもっと思いっきりするんだよ……こんな、風に……」と玲はもう一度、キスをしようとするが俺はそれを避けた。

 

 こいつ、どうなってるんだ……。


「夜空、お前は先に屋上にいてくれ……2人で話す」

「うんうん、についてね……」


 その言葉を聞いた瞬間、身体中がゾッとした。


 こいつは、本当にどうなっているんだ?

 別れたはずだ……なのに、なのに何故、こいつはこんなに、昔と同じ目をしているんだ。


 夜空はお弁当を持って教室を去っていった。


「ねぇねぇ、優斗〜♪」とお弁当をふたつ机の上に出した。


「優斗のために、頑張って作ったんだぁ〜♪ 結婚してからのお楽しみにしようと思ってたけど、今一回食べて欲しいなぁ〜♪」

 

 ほんとに気味が悪い。

 よーく見ると、玲の目には俺しか映っていない様に見えた。


「優斗♪」

「なんだよ……」

「大好きだよ……」


(好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き、好き)


「なぁ……俺たち、別れたんだぞ……?」

「そんなの、知ってるよ♪」

「なら、なんで……なんで、俺のことが好きなんて言うんだよ? お前はもう……もう、翔吾と結婚すればいいじゃねェーかよ……」

「うんうん、翔吾とは体だけ〜♪ 私は優斗のことが好きなんだよ……今日だって……」と玲はお弁当に巻いている布をほどきお弁当箱を開けた。


 そこには……。


「優斗の好きな、食べ物だらけを入れて作ってみました♪」


 とても、気持ちが悪くなった。


「なんでだよ……なんでだよ……」

「だからさ、"私、優斗のこと好き"だから……」


 そうかよ……そうかよ……。


 俺は玲のお弁当を掴み「いただきます」と言って勢いよく食べた。


 お腹が空いているのか、すぐに食べ終えた。


「これでいいかよ?」

「うん♪ ありがとう。あ、お箸もらうよ」


 俺は玲にお箸を渡すとーー。

 玲はそのお箸を舐めた。


「間接キス〜♪」


 気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。

 壊したい、壊したい、壊したい。


 気づけば、また、こいつを壊したいという感情が湧いていた。

 

「じゃぁな……」と俺はお弁当を持ち屋上へ行き、夜空と昼ごはんを食べた。


 昼休みの出来事の後から、俺はあいつらを壊したいという感情で溢れて気づけば、そのことだけだった。


 放課後。


「優斗〜♪ 一緒に帰ろ!」


 ぁあー、壊してやりたいなぁ。


「ん? 俺、夜空と帰るから、この尻軽ビッチさん……」と俺と夜空はカバンを持った。


 玲はその場で固まった。


 翔吾や周りに見られてしまったが、仕方がない。

 こいつ、そして、翔吾を壊すためなら……。


 復讐の続きを始めようじゃないかーー。


 俺と夜空は教室を出た。

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