第十話(玲目線)
優斗と夜空さんが水族館に行った夜ーー。
一件のLINEが来た。優斗からだ。
『牧橋公園に来れるか?』
『うんうん、行けるよ』
なんだろなぁ……お土産かな?
私は急いで、靴を履き公園へ向かった。
雲が黒く雨が降りそうな天気だ。
牧橋公園なんかに呼び出して……もしかして、プロポーズ?
楽しみだなぁ……。
牧橋公園に着くと、そこには優斗だけではなく夜空さんもいた。
「なんで、夜空さん?」
「お、やっと来たか……」と優斗は立ち上がり、私のところへ来る。
プロポーズかな……?
きっと、そうだ。
夜空さんにプロポーズの手伝いをしてもらってたんだ……高校生なのに、プロポーズって、ほんと優斗は私のことが好きだなぁ〜。
優斗は私の目の前に来る。
「あのさ……玲……」
「はい」
「俺と別れてくれ……」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
別れてくれ? ……。
一体何を言ってるのか、理解できなかった。
だって、10年間も一緒に付き合っている彼氏からいきなり、「別れてくれ」なんて……。
意味がわからなかった。
「言ってる、意味がわからないよ……」
気づけば、私の目からは大粒の涙が垂れていた。
「……………」
「嘘だよね? ねぇ、嘘だよね?」
信じたくない。
何かのドッキリでしょ? きっとそうだ。
ほんと、優斗は意地悪だなぁ。
「本当だよ……」
その言葉を聞いた瞬間、目からは更に大量の涙が垂れる。
「意味がわからないよ、なんで? なんで……私のこと嫌いになっちゃった……?」
嫌われる理由が思いつかなかった。
私が何をしたのだろうか……。
そんな私を笑う様に、雨がザァーと降り出した。
「あぁ、俺はお前が嫌いだ。殺したいほどに嫌いだ。お前も、俺の親友の翔吾も殺したいほど嫌いだ!」と優斗は怒鳴る様に言った。
その言葉を聞いた瞬間、なぜ「別れる」なんて言ったのか理解ができた。
ぁあー、やっぱり、あの物音は優斗だったんだ……。
私は体を震わせながら「嘘だよね……ねぇ、嘘だよねぇ……」
「嘘なはずないだろ? 俺は、前にお前の家に財布を取りに行った時に聞いちまったんだよ……お前らが気持ちよさそうにしているのをさ……」
「そうだったんだね……」
バレちゃってたのか……。
「私の体自由にしていいからさ……お願い、一からやり直そうよ……」
「そんな、汚い体、興奮しないよ。今の俺にはさ……だからさ、俺たち別れよ……」
その後は何を言っていたのかは、覚えていない。
けれど、私たちは別れたんだーー。
○
私と翔吾がそういう関係になったのは、中学3年生の頃だったーー。
受験勉強のせいか、ストレスの溜まった私はある日。
私は色っぽい服装をしながら優斗と勉強をしていて、優斗を誘った。
しかし、優斗にはそういった欲がなく結局行為には至らなかった。
でも、私は自分じゃ抑えられないほどの欲を持っていてついに、優斗の親友の翔吾とした。
翔吾も乗り気だったため、「しよ」と言ったらすぐにした。
それから、初めは月一ぐらいだったのがどんどんと増えて、週一となった。
いけないこととは、わかっている。
でも、やめられなかった。
私の家だけではなく翔吾の家、カラオケでもした。
するたびに、少しずつ最初はあった優斗への罪悪感が薄れていった。
○
優斗と夜空さんは手を繋ぎ帰っていった。
「待ってよ……」と手を伸ばした頃にはもう遅かった。
どこで道を間違えてしまったのだろうかーー。
私には理解できなかったーー。
雨でぐちょぐちょになった地面に私は膝をつけて、空を見た。
ぁあー、私のバカ……。
しかし、なぜか優斗とは別れたはずなのに好きでたまらない。
結婚したい、結婚したい。
キスしたい、キスしたい。
「あ、そうだ……もう一度、付き合えばいいんだ……」
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