最終話 "お前とは結婚しない"

 私と翔吾は服を着て、優斗の家へと向かった。


 仲直りかな?

 それとも、告白かな?


「優斗、いきなり俺たちを呼んでどうしたんだろうな?」

「わからないけど、楽しみ」


 しかし、心を弾ませる私はその光景を見た瞬間にその気持ちは、絶望へと変わった。





 ピーポーンとインターホンが鳴る。


 俺はLINEで『開いてるから入ってくれ』と送った。


 すると、ガチャンとドアが開く音がした後に階段を登ってくる足音がした。


 さぁ、"復讐の開始だ"


「優斗〜」と玲は言いながらドアを開けた。


 夜空を見て、2人は絶望をしてその場に、膝をついた。


 そう、俺と夜空が同じベットにいる現場を見たからだ。


 夜空は咄嗟とっさに布団の中に隠れた。


 恥ずかしいのだろう。

 一応、復讐の仕方は説明したがやはり、他人に裸を見られるというものがヤダなのだろう。

 俺はというと……復讐をしたいという気持ちによってか、全然そんな感情が湧かなかった。


「う、嘘だよね……優斗……」と絶望する玲。


 ぁあー、俺がこの1ヶ月で見たかった顔はその顔だよ。

 ずっと、ずっと、見たかった。


「なぁ……何かのドッキリだよな!? なぁ、そうだよな! 優斗……」


 俺は夜空に熱いキスをした後に、「ドッキリ? 何言ってんだよ?」と言う。


「お前、俺が夜空のことが好きってこと知ってるよな!?」と立ち上がり激怒する翔吾。


「ああ、知ってるよ……、ぁあー、お前はほんと自分勝手だなぁ……、中学の時もいつもいつも、お前らがしたことじゃねェーかよ……」

「っな!」

「なぁ、翔吾……良いこと教えてやるよ……、俺はなぁ……お前らがそういう関係なことぐらい知ってんだよ……」


 そう言うと、翔吾はその場で顔を真っ青にして膝をつけ正座した。


「ねぇ……優斗……、私としないのになんで、夜空さんとするの!」と泣きながら言う玲。


「ほんと、お前は何もわかってねェーよな……幼馴染として、言っておくけどよ。よーく、聞けよこのビッチ……。俺はお前らに復讐するために、ここに呼んだんだよ。なぁ、お前らがさっきまでしてたことぐらい俺は知ってるんだぜ?」と俺は、スマホの画面を見せた。


 そこには【14HR】というグループに通話時間、6時間と書かれたメッセージが。


「ぇえ……」

「俺たちのクラスの奴ら、お前らがしてるところ全部聞いてたんだよ……」


 俺は画面をスクロールさせた。


『あの人ってビッチなん?ww』『キモ、優斗くん可哀想』『ぇえー、わたし翔吾くん好きだったのに……』『死ね』などと書かれている。


「え……う、うそだろ……」

「嘘のはずねェーだろ?」

「で、でも、どうやって……」

「そんなの、そこのビッチがバカだからだよ」


 そう、俺は玲の作ったお弁当を勢いよく食べて玲の気を逸らしているうちに、夜空が通話をオンにして玲のカバンに入れたのだ。

 正直、スマホの充電との戦いだった。

 通話を俺がつけた時には、2人はヤっていて吐きそうになった。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」と壊れた玲。


 その姿を見た時に、口角は何故か上に上がっていた。


 ぁあー、気持ちがいい。

 これが、復讐か。


「なぁ……優斗? 実はさ……俺は、ただこいつに脅されてたんだよ。夜空も、別にそういう演技要らないからさ……悪いのは全部、あいつなんだよ」


 どこまでも、クズだなぁ……。


「演技? 何言ってんだよ、お前」


 俺は夜空とキスをしてた。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"なぁ、嘘だよなぁ…… ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"」と翔吾も壊れた。


 ぁあー、キスと復讐の気持ちよさで脳が溶けそうだよ……ずっーと、こうしたかった。

 あの時から、玲と翔吾の関係を知った時から。


「なぁ、玲……」


 俺は玲の方を見るとーー。


 玲は興奮していた。


「優斗の裸……はぁはぁ……」


 キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい、キモい。


「なぁ、玲。こんなこと、彼女の前で言うのはおかしいと思うけどさ、俺はさ、お前に言いたいことがあるんだ。俺は、お前と結婚したかった。お前と子供を作って、楽しい家庭を築きたかった……」


 気づくと目からは涙が出ていた。


「最後にさ……"お前とは結婚しない"」


 その言葉を聞いた瞬間、玲は自慰行為をやめてその場で青ざめて固まった。


 こうして、俺の1ヶ月に渡る、復讐は終わった。


 その後は、2人は学校に居場所が無くなり、来ることはなかった。

 そして、2人は気付けば退学していた。





「最後にさ……"お前とは結婚しない"」


 その言葉を聞いた瞬間に何故か、嬉しかった。

 悲しいはずなのに、何故か嬉しかった。

 なんでだろう……きっと、私は結局、優斗が幸せならなんでも良かったのかもしれない。


 それから、2週間後。


 私は両親とは口を聞かずに部屋に引き篭もった。

 どうやら、両親は翔吾との関係を知っていたらしい。

 

 そして、その日のトイレでの出来事だった。


 トイレをしていると、いきなり吐き気に襲われた。

 最近、生理も来ていないーー。

 来てもおかしくない頃合いだーー。

 これってーー。


「どうしたんだよ……いきなり、呼び出してさ……」


 翔吾の目の下には大きなくまが。

 人のこと言えないか。


「あのね……私、生理が来なくて……、妊娠しちゃったみたいなの……、まだ、病院には行っていないから確定ではないけど……」

「ーーーっ、は!?」

「どうしよう……」

「なんで、子供なんて作ってんだよ……絶対アレだろ! あの時に……ゴム変えないでヤったあの時だろ……」と激怒する翔吾。


 ぁあー、こんな時、優斗だったら、どうしてくれたのかなーー。


 気づけば目からは涙が垂れていた。


「産むよ。産んで【優斗】って名前にするんだ」


 そうだ、優斗が無理なら、優斗を作れば良いんだ。





 退学して、ある日のことだった。


「ねぇ、あの2人が退学した理由……妊娠したからだって」

「マジかよ、あのセフレさんたち妊娠してんのww、高1で妊娠ってww、人生詰みやな」

「まぁ、そんくらい罰がないとね。優斗さんが可哀想だもん」などと、周りが話ているのを盗み聞きして知った。


 玲が妊娠していることを。


 玲が翔吾とそういう関係にならなかったら、今頃どんな未来があったのだろうかーー。


 それから、8年後。


 俺は夜空と結婚した。


「ほら、あなた」


 俺と夜空は子供を授かった。


「お、おう」

「名前、どうするの?」


 名前っ……女の子だもんな……。


「【玲】」


 何故か、口が勝手にそう言っていた。

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