第三話(玲視点)

 玲と翔吾は同じベッドで横になりながら話す。


「でもさ……10年間一緒にいるからわかるよ……そんなことないって…………ことはないことぐらい……。でも、やっぱり私……ないって信じたい。優斗のこと好きだから……」

「そうか……でも、あいつより俺の体の方が好きだろ?」

「そ、それは……」


 玲は少し戸惑う。


 たしかに私は実際のところ優斗より、翔吾の体の方が好きなのかもしれない。

 でも、優斗と別れるのも嫌だ。


「だからさ、しばらくの間はヤるのをやめよう。念のためさ……」

「そ、それはやだ!」


 そう、考えるより先に口が言ってしまった。


「ほんと、お前はビッチだな……しょうがないな……もう一回ヤるから、しばらくは頼むよ」

「ほんと!? って、ビッチって言うなぁ」

「ああ、でもしばらくはそういう関係はなしな?」

「無視ぃ……わかった」


 あー、私ってなんて最低な女なんだろう……最低なことぐらい自覚はしている。

 でも……翔吾とヤっているとそんなことすらなんとも思わなくなってしまう……。



 今日は一日、優斗を観察することにした。

 そうすれば、優斗が誰のことが好きになったのかわかるかもしれないと思ったからだ。


 優斗を観察していたら、2時間目の終わりの後の休み時間から変化が現れた。


 それは、夜空と喋っていることだ。

 普段なら、夜空とは必要な時しか喋らない。


 私は夜空と優斗の間に入り邪魔しようと考え、話の中に入る。


「それでさ、このペンギンって……」

「あのさ、優斗?」

「ん? どうしたんだ玲?」


 夜空は喋るのをやめて、こちらを見ている。

 その姿は「邪魔しないで」とでも訴えているように見えた。

 私の優斗なのに……。


「う、うん、なんでもないよ。放課後一緒に帰ろうね」

「ああ、当たり前だろ?」


 私の考えすぎだったのかもしれない。

 そうであってほしい。

 バレていなければまた、きっと翔吾とヤることができる。


 その後はいつも通り授業を受けて時間が過ぎていった。


 そして、放課後の帰り道。


 私は強く握った拳を解いて勇気を振り絞って、あることを聞いた。


「ねぇ、優斗……」

「なんだ?」

「優斗ってさ……私のこと好き?」


 優斗が返事をするまでに少しの間が空いたように、感じた。


「当たり前だろ? 何当たり前のこと聞いてんだよ?」

「そ、そうだよね!」


 やっぱり、私と翔吾の思い過ごしだったようだ。

 優斗の顔からはほんとに、今までと変わらない柔らかい顔だったためそう感じた。

 これで……また、翔吾とヤれる……。


 私は優斗の手を握る。


「どうしたんだ? 今日は珍しく積極的だな」

「うんうん、そんなことないよ」


 これで……優斗のことを好きでもいられる。


 私はすごく欲張りだ。

 悪いことをしているということぐらい分かっている。

 でも、やめられない。

 だって、今の私はとても幸せ者だからだ。

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