38 彼女の来訪
翌日。
俺はいつも通り学校に通い、席に着いていた。
クラスの皆は体育祭の話で賑やかに話している。
立花は何とかするって言ってたけど…。
さっきから借り物競争や仮装二人三脚の話がずっと出てるんだよな。
やっぱり面白そうだから人気が高いんだろう。
出場出来るだけでも運がいいと思っていた方が良さそうだ。
「皆おはよう。さっさと席に着けー」
担任の先生が入って来て、皆そそくさと動き出す。
「今日の一時間目は体育祭の種目決めやちょっとした説明の時間にする。皆ちゃんと考えてきたな?」
先生の言葉に、皆が元気良く返事をする。
すぐに朝のホームルームが終わり、また皆が賑やかになる。
俺は普通に話すことは出来るけど、積極的に会話に入るタイプでは無いのだ。陰キャですよどうも。
する事が無いので立花がおすすめしてくれた本でも読んでみる事にした。
その本は甘い恋愛の話。
主人公は友達が少ないけれどやる時はやる男。ヒロインを何度か危機から救い、ヒロイン一緒に過ごしてる内にお互いに好きになっていってるというものだ。
そしてヒロインは辛い過去を背負っていて、心を閉ざしてしまう。
だけど主人公と出会って、前を向けるようになった。という所まで読んだ。
今からヒロインが辛い過去を主人公に告白する、というシーンを見ようとした所で。
ゆっくりと教室の扉が開かれた。
さっきまで騒々しかったのが嘘のように、一瞬で静かになる。
急に静かになったことに、俺は本を読む手を止めた。
校長先生とかがやって来たのかな。
まあ、俺は悪いことは何もしてないし。
続きを読もう続きを。
静かになったクラスの中で、誰かが小さい声で呟いた。
「…可愛い」
「…天使だ」
「…肌綺麗すぎじゃない」
「…美人とも美少女ともいえる、そんな容姿ですね。はい」
…ん?
ちょっと待って。
俺の知ってる校長先生は、可愛くも天使でもないし、肌は綺麗だったかは覚えてないけど美人とか美少女の類では無かったと思う。
男だし。
さっきの情報に当てはまる人は、俺は立花しか知らない。
まさかとは思いながら、俺は扉の方へと振り返った。
そこに居たのは、老若男女問わず恋をしてしまうような美少女だった。
優しさを感じるゆるやかで美しい目に、鼻は高く、唇はぷっくりとしていて潤いを失うところが想像できない。
身長は平均くらいなのに胸は母性に溢れていて、四股は細く整っていて長く見える足。
それでいて新雪のような穢れを知らない白い肌の持ち主なんて、俺は一人しか知らない。
紛れもない、立花日向だった。
クラスのお調子者として扱われている男子が、大きい声で立花に話しかけた。
「お、おはようございますっ立花さん」
「はい。おはようございます」
先程の男子が話しかけたにも関わらず。
立花は俺の方を向いて、こぼれるような笑顔をしながら返事を返した。
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