36 彼女とハンバーグ
触れ合いの後は、時間も時間でお腹が空いてしまった。
なので2人で台所に立ち、夕飯を作る事に。
俺は料理が全然出来なかったが、最近は彼女のおかげで少し出来るようになっていると思う。
今日の夜ご飯はハンバーグである。
立花は透明なプラスチックで出来た手袋をつけて、挽き肉に塩をかけ粘りが出るまでもみもみしている。
俺はというと人参と玉ねぎを危なげなく切っている。
ちゃんと左手は猫の手にしているし、実は立花が家に帰った後何もないまな板の上で切る練習をしていたので切るだけなら余裕なのである。
まあ秘密にしておこうと思ったんだけど、練習してる途中に調子に乗ってトントンする速度を上げたら、左手の指を少し切ってしまって絆創膏を貼った。
立花は些細な事でも違いに気づける完璧美少女なので、当然気づかれた。
怪我をした事を心配していたので、調子に乗って速度を上げたという事だけ言わずに説明したら、「練習してくれてたんですね」と少し嬉しそうにしていた。
まあそんな事は置いといて、切った玉ねぎをフライパンに入れて炒める。ついでにブロッコリーも茹でておく。
炒め終わった玉ねぎを、挽き肉の入ったボウルに入れる。
そして卵、牛乳、パン粉、胡椒も入れて、立花が素早く混ぜる。
俺は先程のフライパンに油を引き、人参を入れ炒めていく。
最初に比べれば見事な連携プレイだ。成長を感じる。
立花は混ぜ終えた物を何個かに分けて空気を抜きながら楕円型にして、真ん中をくぼませた。
それを両面が軽く焦げ目がつくまで焼き、水を加えて蒸す。
「そろそろですかね」
立花がハンバーグに串を刺す。
透明な肉汁が出たので、回収してお皿に乗せた。
フライパンはそのままウスターソースとケチャップを加え少し煮た。
それをハンバーグにかけ、完成だ。
お皿を運んで、二人仲良く座る。
「「いただきます」」
最初からお腹が空いていたのだが、ハンバーグを作ってる途中から美味しそうな匂いがずっとして、早く食べたくてしょうがなかった。
ハンバーグを食べやすく切り分け、口に運ぶ。
ハンバーグを噛み締めると、濃厚なソースの味と挽き肉の旨みが口の中を占領していく。
柔らかめのハンバーグだと思っていたが、そんな事は無く十分にお肉感が味わえた。
「…美味しい」
あまりに美味しすぎて、思わず口にしてしまった。
何か視線を感じるので、立花の方を見てみるとやはり俺を見て微笑んでいたいた。
「美味しいですね」
「うん。本当に美味しいよ」
「それは良かったです。結城さんはちゃんとお料理が上達してますね」
「素晴らしい師に出逢えたからかな」
俺がそういうと、立花は本当に楽しそうに笑う。
「弟子の成長が見れて私はとっても嬉しいですよっ」
目を細め、少し頬を赤くしている彼女。
多分俺もそんな感じなんだろう。
二人の夕食はとても幸せな雰囲気に包まれていた。
☆☆☆☆☆
夕食を終え、二人でお皿を洗う。
他愛のない会話をしていたが、ふと嫌なことを思い出した。
「あっ」
体育祭の件だ。
俺が洗い物の手を止め、話を途中で辞めたため立花は不思議そうな顔をしてこちらの顔を窺ってくる。
「どうしたんですか?」
「いや…体育祭の出たい種目を決めておくっていう宿題があったな、って思い出した」
「それがどうかしたんですか?」
立花は更に不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
そうだった。この少女は運動が凄く得意だった。
クラスの誰かが「立花さんは女子のリレー選手に選ばれたらしい」って言ってたしな。
この才女は例に漏れずなんでもできるなぁ。
「運動は嫌いじゃないんだけど、あんまり得意じゃないからさ…」
立花は俺の言葉を聞くと、なるほどといった顔になる。
そして少し考える素振りを見せて、彼女は顔を赤くして言った。
「ま、まだ出たい種目が決まって無いなら、私と一緒に出ませんかっ?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます