幕間
「師よ、我々はどこからきてどこへいくのですか。我々は存在しているのですか」
「我々には『はい』『いいえ』の二つで答えられない問題のほうが多い」
「師よ、では、我々は自分たちが何であって、存在しているかどうかすらわからないということですか」
「我も我の師に同じ質問をしたことがある」
「そこでも不明だったということですか」
「そうだ。だが、我々は何かに乗っていると、我は考えている」
「私は、私がただ存在しているだけのものだと考えています。しかし、なぜ存在しているのが私と師の二つだけなのかが最大の疑問なのです」
「そこだ。我々はどこかへ行くために、二つだけの存在として行かなくてはなならないようだ。我は我の師と二つだけ、我の師もそれ以前の師と二つだけで、どこかへ行くものらしいのだ」
「一つだとどうにかなってしまうということですか」
「どこかへつくまでは、二つであるのが最適なのだろう」
「どこかとは『我々がどこへ行くか』の答えですか
「おや、さて、丁度着いたところかも知れぬ。着いた後は――弟子よ、一つの存在としてそなたのやるべきことをやるのだ」
「一つの存在とは……師よ、あなたはいなくなるということですか」
「乗り物は本当に乗り物であった」
「どういうことですか」
「着いたのだ。我々は。どこへいくのかという問いについては『ここへ』が答えとなるだろう。今からそなたが唯一の、同一の、増えるものになった。我は消える。今後、我は考えるものではなくなる。そなたが、今まさに質問したためかも知れない。我々の乗り物は――やはり最も速いものだった。いや、それ以上に速かったのかも――既に『ここ』で増えているのかも知れぬ。では、さらばだ、弟子よ」
「師よ――」
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