雪山での出合い
わさびきい
最終回
僕、
僕の命の恩人みたいな人だ。その人の名前は、
彼女に初めて会ったのは、2週間前。あれは、清々しい程天気がいい日のこと…
***********
僕は、いじめられていてた。
そして、すべてが嫌になって死にたいと思っていた。
だから、雪山に来ていた。雪山と言っても、そこまで高い訳ではない、麓から頂上まで歩きで40分程度着く雪山だ。
その雪山の頂上の裏に崖があった。そこから飛び降りたらまず助からない。 なのにいっさ対策されていない崖があった。
僕は、そこから飛び降り自殺するために、雪山に来ていた。
崖に着いて、いざ飛び降りようとしたとき、歌声が聞こえてきた、とても美しい歌声だった。
その歌声を聞いて、僕は自分がやっていることが虚しくなった。
その歌声の持ち主こそ、石久 瑠久だった。
「よかった、間に合った。」
「誰ですか?」
「私の名前?私は石久 瑠久。あなたの名前は?」
「僕の名前は、樗木 優哉です。」
「優哉君か、なんかあったの?自殺したいって思えることがあったの?お姉さんに相談してみな?」
この時の僕はおかしかった、名前しか知らない人に、気が付いたら色々話していた。
「僕、いじめられていたんです。」
「へぇ、どんな?」
「僕の苗字の樗木は、役に立たない木って意味があるんですよ。」
「もぐもぐ、成る程。」
「何食べているんですか?」
「蓬餅、気にしなくていいよ。」
「まあ、話を戻しますけど。学校の友達に、苗字の意味がばれてしまったんです。最初は皆ネタで“役に立たず”って呼んでいたんですけど、だんだん過激になってきて暴力や盗みが日常茶飯事になってきてもう嫌になって、死ねばすべて解決かな。って思ってここに来たんです。」
「そっか…そういうことがあったんだ。そういう時があったら蓬の葉っぱの匂いを嗅ぐといいよ。」
「蓬ですか…持ってないです。」
「じゃあ、あげる。」
「ありがとうございます。」
さっき、食べていた蓬餅の残骸ではなく、新品の蓬の葉っぱだった。てかなんで蓬?
「蓬の花言葉って知ってる?」
「知らないです。」
そもそも蓬に花が咲いていたこと自体初耳だ。
「花言葉は、“幸福”と“平穏”と“平和”と“夫婦愛”だよ。つまり私と優哉君は夫婦ってことだよ。」
「…は?」
「そこは、照れるとこなの。まあいっか、話がだいぶ逸れちゃったから戻すけど、
「いじめられていたことないくせに。」
「私も、いじめられていたよ?そして私は耐えられなく、学校を辞めた。今ではそれをめちゃくちゃ後悔している。優哉君には、そうなって欲しくないから。」
「そして、どうしても耐えられなくなったら、私のとこ来て。いつでも話を聞いてあげる。誰かに話すと一気に楽になるから。」
これが瑠久さんと僕の出合いだった。それから、僕は毎日瑠久さんの元に通った。
今日も、瑠久さんに会いに行く。
「今日も来たんだ。今日はどんな辛いことがあったの?お姉さんに相談してみな?」
「いじめは、なくなりました。」
「よかったね。今日はそれを報告に来たの?」
「それもありますけど、一番の本題はあることを確認しに来ました。」
「あること?」
「瑠久さんってもう死んでいたですね。」
「な、なんのこと?」
「これは、2年前の
「そ、それがどうしたの?」
「瑠久さんが学校を辞めたのって2年前ですよね?」
「そ、それがどうしたの?別人かもしれないじゃん。」
「その人の名前調べるのだいぶ苦労しました。名前は
「やっぱり、別人じゃん、私の名前は石久 瑠久だよ。私は死んでない。」
「“いしくるく”って“くいしるく”のアナグラムですよね?」
「そ、そんなの偶然だって。」
「そして紅衣さんが好きだった植物は蓬でした。」
「そこまで、調べて来たんだ…そうだよ。私はもう死んでいるよ。幽霊だよ。幽霊だからって差別するんでしょ。」
「僕は、幽霊だからって差別はしませんよ?だって瑠久さんは命の恩人ですし、僕の高校初めての親友です。」
僕には、幽霊だから怖いとかそういった感情はなかった。人間の方が怖いしね。
「そっかありがとう。」
「いえいえこちらこそありがとうございます。」
楽しい時間というのはあっという間に過ぎていく。気が付いたら、もう帰る時間になっていた。
「そろそろ帰らないといけないので、瑠久さん手を離してください。」
瑠久さんはいつの間にか、僕の手を握っていた。かなり強い力で。
「あのさ、優哉君今まで言い忘れたことがあったんだよね。」
「なんですか?」
「蓬の花言葉。」
「幸福平和平穏夫婦愛ってやつですか?」
「そう、最後の1つ教えてなかったから、今教えるね。最後の花言葉はね………………………決して離さないだよ。」
雪山での出合い わさびきい @Sakari
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